東日本大震災の発生からあと1カ月で10年を迎える。被災地の自治体は今なお深刻な人手不足に陥っており、この10年で全国から宮城、福島など被災6県に派遣された応援職員は、総務省の取りまとめで延べ約9万7千人。九州7県と福岡、北九州、熊本の3政令市からは約1130人。「広域支援」は定着しつつあるが、地域づくりの基盤となる自治体職員の確保という根本的な課題も残る。

 被害が著しい東北地方の3県で2020年度に不足した職員数は、宮城931人、福島651人、岩手358人−。2千人規模が不足する要因には、職員自身の犠牲に加え、震災後の人口減や流出によって3県では10年間に5万〜20万人が減少し、人員確保が容易ではないことなどが挙げられる。被災自治体からは「応援がなければ運営できない」との悲鳴も上がる。

 震災の発生直後は避難所の運営、罹災(りさい)証明の発行、仮設住宅の確保などのニーズが高く、生活が一定の落ち着きを取り戻すと復興事業が本格化する。その際、道路の復旧や土地のかさ上げに必要な土木、建築といった専門性の高い技術系職員が長期にわたり数多く求められる。

 だが職員確保には民間企業との採用競争など不確定な要素も絡み、宮城県の担当者は「合格者が採用数に達しないこともある」と明かす。被災地であることが理由かどうか定かではないが、合格者が辞退する状況も続いている。

 政府は広域支援を提唱するものの、毎年のように各地で想定を超える規模の災害が発生し、各自治体は「人繰りをやりくりして」(関係者)派遣しているのが実情。九州からの応援が少ないのは近年大規模災害が相次いでいるためで、熊本地震があった熊本市からの派遣は延べ24人にとどまる。

 広域支援では課題も浮かぶ。これまでは支援する側が受ける側を「指定」していたためミスマッチが生じ、支援状況にばらつきがあったという。総務省は昨年、都道府県や市町村が派遣可能な技術系職員の数を事前に登録する仕組みを構築。人数と専門性を把握する同省が「差配」する方式に改めることで、「円滑な支援体制を確立する」(担当者)としている。 (鶴善行)

西日本新聞 2021/2/11 6:00
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