【ニューヨーク=後藤達也】米長期金利の上昇が加速している。16日のニューヨーク市場で米10年物国債利回りは一時1.30%と先週末より0.10%上昇し、約1年ぶりの高水準となった。政府の経済対策に加え、新型コロナウイルスの新規感染が減少傾向となり、今後の景気回復期待が強まっている。

長期金利が1.3%台を付けるのは2020年2月27日以来で、米国でコロナ感染者が急増する直前にあたる。2020年夏には0.5%程度まで低下していたが、景気回復期待とともに徐々に上昇し、21年に入って上げが加速した。

米国のコロナ新規感染者数は足元で1月のピークと比べて6割以上減っており、市場では今春以降の経済再開の期待が強まっている。バイデン政権は1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策の成立に向け、強気の交渉を続けており、「国民への現金給付やサービス産業での再雇用によって個人の購買力は急回復する」(米モルガン・スタンレーのエレン・ゼントナー氏)との予想が増えている。

株式市場ではいまのところ金利上昇への警戒は限定的だ。16日にはダウ工業株30種平均は史上最高値圏を保った。長期金利は歴史的にみればなお低水準で2019年末(1.9%程度)を大きく下回る。社債や住宅ローン金利も低く、景気をすぐに冷やすとの懸念は少ない。

ただ、世界の株価は超低金利の長期化を前提に上昇が続いてきたため、金利上昇に歯止めがかからなくなれば株価に逆風となるおそれがある。米バンク・オブ・アメリカが16日公表した投資家調査では大きなリスクとして「コロナワクチンの進展」に次いで、「債券市場の動揺」が挙げられた。
日本経済新聞 2021年2月17日 5:56
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16EE80W1A210C2000000/