協議わずか4時間…9人の候補者は非公表…透明性なく決定経緯も結局「密室」 橋本新会長を選んだ五輪組織委

 新会長に橋本聖子五輪担当相を選んだ東京五輪・パラリンピック組織委員会。候補者として推薦した検討委員会は3日間、合計わずか4時間の協議で終えた。「密室人事」との批判を受けた「川淵(三郎)案」の白紙撤回から1週間、透明性をアピールするはずだったが、18日の記者会見でも明確な選定経緯の説明はなく、国民に不信感を残したままの船出となった。

◆「橋本さんの話に集中した流れ」
 「橋本さんに比べてマイナス点があったと思われる。人権問題になるので名前は勘弁してほしい」。検討委の御手洗みたらい冨士夫委員長(キヤノン会長)は会見で、各委員から推薦された候補者が9人いたことを明かしたが、氏名は伏せた。
 検討委は16日から開かれ、推薦者提出から「橋本氏一本化」まで行った2日目の会合は1時間半で終了した。御手洗氏によると、自身を除く7人の委員が推薦者を提出。6人が複数回答も含めて、橋本氏の名前を書き込んだ。
 御手洗氏は最終的に橋本氏に絞り込んだ過程について「一人一人(の資質など)を話した。ひと通り終わったら橋本さんの話に集中したという流れだった」とぼかした。
◆「感動的な会議」に懐疑
 橋本氏は日本スケート連盟会長だった2014年、五輪の慰労会で男子フィギュアスケート選手にキスをする写真が報道された。御手洗氏は「国務大臣をやっている。社会的にも政府の中でも橋本さんの謝罪をきちっと受け入れていると解釈している。われわれの中では質問は出なかった」と説明。検討委がこの問題を議論しなかったことが判明した。セクハラ疑惑は今後も国内外から蒸し返されるリスクもある。
 そもそも検討委は事前に委員の氏名や会議日程、場所を明かさず、秘密裏に行われた。委員の名前を公開したのも、この日になってようやく。短期間での議論に「出来レースだったのでは」と記者に問われた御手洗氏は「熱のこもった、感動的な話でかなり盛り上がった会議となった」と反論した。
◆胸張って「オープンだった」
 森喜朗前会長の就任時も「密室人事」だった。公式エンブレムの盗作疑惑や国立競技場の建て替えを巡っても不透明な意思決定が批判された。11日に森氏の辞意が報道されると同時に、森氏から要請を受けた川淵三郎・日本サッカー協会元会長案が浮上。「透明性がない」と政府に批判され、白紙に追い込まれた。
 国民の厳しい目が向けられる中、この日の会見で「オープンで透明度の高い手法を使い、橋本会長が誕生した」と胸を張った御手洗氏。その説明にどれほどの人が同意しただろうか。

東京新聞 2021年02月19日 06時00分
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