菅義偉首相が1都3県に発令している緊急事態宣言の延長を表明した前日の2日夕、首相官邸には西村康稔経済再生担当相、田村憲久厚生労働相、加藤勝信官房長官らが集まり、対応を協議していた

「数字が悪いなら仕方がない…」

 首相はこう述べ、宣言延長の方針を固めた。「数字」とは、政府が宣言解除を判断する上で重視する病床使用率だった。この時点で、千葉県は最も深刻なステージ4(爆発的感染拡大)のレベルを脱し切れていなかった。

 延長幅は2週間程度。「1カ月」を主張する出席者もいたが、「宣言を長く続けても意味がない」との意見が大勢を占めた。問題は発表のタイミングだった。

 現在の緊急事態宣言が発令されたのは1月8日だった。当時、首相は経済への打撃を懸念してギリギリまで宣言発令を明言しなかった。しかし同月2日、東京都の小池百合子知事ら1都3県の4知事が西村氏に対して宣言発令を要請。首相の判断は、知事らに追い込まれた末の「後手」という印象を与えた。

 小池氏は今回も同じように動いた。宣言の期限が迫る中、他の3知事に対し、一致して政府に宣言延長を申し入れるよう提案。2日には「4知事が政府に宣言延長の申し入れを行う」との報道が流れ始めた。ただ、実際にはまだ知事の足並みはそろっていなかった。

 小池氏は1月と同じようなシナリオを描いているのではないか−。こう疑念を募らせていたのは千葉県の森田健作知事だ。元自民党国会議員の森田氏は首相とは長年の友人関係にある。

 「とにかく年末年始と同じ轍(てつ)は踏んではいけない。早く言ったほうがいい」

 森田氏は首相と頻繁に連絡を取り合い、早期決断を促した。

 こうして迎えた3日。首相が延長方針を表明する約1時間前に始まった4知事のテレビ会議は荒れ模様だった。小池氏は2日に「もう1段(対策の)ギアを上げないと間に合わないのではないか」と述べ、延長の呼びかけに前向きだった。足並みをそろえたい意向の小池氏に対し、出席者から異論が相次いだ。

 「いったん解除して、感染者の具合を見ながら、感染者が出たら蔓延(まんえん)防止等重点措置を打つ」。首相に近い神奈川県の黒岩祐治知事はこう提案した。森田氏は宣言延長を求めつつも「1都3県でも濃淡がある。一緒くたにしてはいけない」とくぎを刺した。

 そして会議が終わり、各知事がマスコミの取材に応じるより先に、首相は電撃的に「2週間延長」を発表した。

 小池氏が繰り返し口にし、主導する1都3県の「ワンボイス」は崩れ去っていた。では一体、「4知事が申し入れを行う」との情報の出元はどこなのか。知事の一人は「小池氏は『混乱を招いて申し訳ない』と言っていたよ」と明かした。(大島悠亮)

3/4(木) 22:54
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