A 私はとある国立大学の工学部で、センサーの研究をしています。センサーとは、様々な物質を検知して、それを知らせたり、物質の含有量などを計測する機器です。原理は、物理学に基づくアプローチもあれば、化学的に計測する手法もあります。例えば、皆さんは病院で血液中の糖分濃度を測定したことはありますか。あれは糖分に対して化学反応を起こす酵素を使って、化学反応が起きた時に発生する電子を検知し、濃度を測定しているのです。

 かつて血液中の糖分濃度を測ることは、とても面倒でした。ですが、センサーが開発されてからは、血液が一滴あれば測れるようになりました。糖分だけでなく、測定したい対象物質は実に千差万別で、そのたびにセンサーの原理も変わります。多種多彩なセンサーが実用化され、センサーを駆使した大がかりなシステムづくりも研究しています。

B 私も某国立大工学部で、エンジンに関係する熱・流体力学の研究を行っています。燃料が持つ熱エネルギーからどう効率よく動力に変換するか。基本はそういう話です。様々なテーマがあり、最先端のエンジンへの応用も視野に入れています。それは燃料の燃焼方法を従来とは大きく変えることで、パワーとエネルギー効率の大幅な向上が期待できる技術です。また、高温になったエンジンを効果的に冷却することも重要な課題の一つで、世界的な競争が繰り広げられています。例えば米ボーイング社も音速の五倍(マッハ五)での飛行を実用化する、と発表していますが、日本の同じ分野の基礎研究は、その課題解決に応用できると考えています。

A 政府の科学技術研究費などを獲得しましたか。

B 科研費に値する価値ある研究だと思っていますから、獲得を目指して頑張っています。

A 二〇〇一年九月十一日の米同時多発テロ事件以降、世界では「テロとの戦い」が叫ばれるようになりました。冷戦下の戦争までは軍隊が互いに睨みあって武力衝突…というイメージでした。ところが、テロとなると、全くそうではありません。劇場やターミナル駅、雑踏など、いつどこで何が起こるか、わからない。そうした恐怖があります。バイオテロ、毒性の高い化学物質を使って無辜の市民が巻き込まれ、一瞬で大量の命が奪われてしまう。

 私は、そうしたニュースを見るたびに、研究者として毒物を検知できるシステムを構築すれば、被害を抑制できないか、などと考えていました。ちょうど、防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」の募集を始めるので、それで共同研究者を決めて研究資金を確保すべく、書類を整えました。ところが、書類も揃った段になって、大学当局者に呼び出されてしまったのです。

…続きはソースで(全文は「正論」4月号に掲載)。
https://www.sankei.com/smp/life/news/210306/lif2103060001-s1.html
2021年3月6日 2時00分