米国産牛肉の輸入急増を抑えるため一時的に関税を引き上げる緊急輸入制限措置(セーフガード)が、18日に発動される見通しとなった。3月上旬時点で2020年度の輸入量が基準を上回った。発動は17年8月以来3年7カ月ぶりで、20年1月に発効した日米貿易協定下では初めてとなる。

 協定では、20年度中の米国産牛肉の輸入量が累計24万2千トンを上回るとセーフガードが発動されることになっており、今回は18日から30日間、関税を現在の25・8%から協定発効前の38・5%に引き上げる。発動から10日以内に両国間で発動基準の引き上げなどを議論することになっており、米バイデン政権との初めての貿易交渉の行方が注目される。

 輸入牛肉をめぐっては、首位の豪州産が18、19年に起きた干ばつで飼料となる牧草が不足した影響で減少し、代わって米国産の輸入が増えていた。

 米国産牛は2003年12月に牛海綿状脳症(BSE)の感染が確認されて輸入禁止となったが、05年12月の再開後は徐々にシェアを回復。19年度は豪州産の29万トンに次ぐ24万6千トンを輸入し、米豪両国で輸入量全体の9割近くを占める。

 穀物中心に育てる米国産牛は脂肪が多く、牛丼や焼き肉店などが仕入れている。今回の発動の影響について、牛丼チェーンの吉野家ホールディングス(HD)の広報担当者は「期間が限定的で在庫もあるため、影響は限定的だとみている」と話す。「すき家」を展開するゼンショーHD、「松屋」を手がける松屋フーズを含めた大手3社はいずれも、今のところセーフガードを受けた価格変更の予定はないとしている。

 和牛など高級路線の国内産牛肉とも市場のすみ分けが進んでおり、国内の畜産業者への影響も少ないとみられる。(高木真也、若井琢水)

朝日新聞 2021年3月16日 19時11分
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