故人の銀行口座が凍結された…預金が引き出せない時の対処法は? 弁護士が解説
3/22(月) 12:14配信 相続会議
https://news.yahoo.co.jp/articles/51cec9415a0550cf92208a2914a5dbaf809213a2

配偶者が亡くなったあと、故人の銀行口座が凍結されてしまい、預金が引き出せなくて困ったというケースをよく耳にします。そんなときの金融機関への対応方法や法的手段を弁護士が解決します。死亡を銀行に知らせずに勝手に預金を下ろしてもいいの?などの疑問にも答えます。

まずは故人の通帳、キャッシュカードを把握する
家族が亡くなったら、まずは家の中を調べて、故人の通帳やキャッシュカードを探しましょう。有価証券については、特定の証券会社から郵便物が届いていないかを確認すると良いでしょう。どうしてもわからない場合には、心当たりがある銀行や証券会社に1社ずつ当たっていくと言う方法もありますが、いちいち書類や戸籍等を提出する必要があるので、かなり労力がかかります。

消費者金融などのカードや書類がないかも気をつけて見ておきましょう。郵便物も確認し、借金の督促が来ていないかもチェックしましょう。万が一多額の借金がある場合には、相続放棄(死亡日から3ヶ月以内)なども検討しなければなりません。

金融機関に死亡を連絡すると口座は凍結される
金融機関に預金者が死亡したことを連絡すると、本人名義の口座は、一旦引き出しができない状態になります。これは、最高裁判所の判例で、預金も遺産分割が必要な遺産であると判示されたためです。預金を引き出すためには、原則として遺産分割協議を成立させて、その協議書とその他の必要書類を揃えて銀行に届け出をする必要があります。なお、必要書類については、銀行によって異なるので、預金のある銀行に問い合わせるのが良いでしょう。

凍結された預金を遺産分割前に引き出す2つの方法
そうはいっても、当面の生活費など、すぐに必要なお金もあるかと思います。そのような場合には、法律には2つの方法が準備されています。1つは家庭裁判所の判断を経由せずに一定額の預金を引き出す方法。2つ目は家庭裁判所の判断を経由して必要な金額の預金を引き出す方法。この2つの方法は、相続法の改正によって新しく導入された制度です。なお、これらの方法は、2019年7月1日よりも前に開始した相続であっても改正相続法の附則により行うことができることになっています。

■家庭裁判所の判断を経由せずに預金を引き出す方法

1人の相続人が単独で、1金融機関あたり、150万円を限度として、預金を引き出す方法です。引き出し可能な金額の具体的な計算方法は、相続開始日時点の預金残高× 1/3×当該相続人の法定相続分(ただし150万円を上限とする)です。

例えば、ひとつの銀行に600万円の預金があったとすると、配偶者が引き出す場合には、600万円× 1/3×1/2で、100万円の預金の引き出しが可能です。必要な書類は、銀行によって異なりますが、一般的には相続人の全員を確認できる戸籍謄本及び引き出す方の印鑑登録証明書、身分証明書等になります。一見、非常に良い手続きのように思いますが、現実には、戸籍謄本等の必要書類を集めるのに1、2ヶ月かかることも多く、葬儀等の費用に充当するには難しいです。

■家庭裁判所の仮処分を得る方法

この方法は、150万円を超える預金であっても引き出すことができるのがメリットです。ただ、この方法を取るための要件は、遺産の分割の審判または調停の申し立てがあること、(2)(1)の事件の関係人の仮処分申し立てがあること、(3)遺産に属する預貯金債権であること、(4)相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の至便その他の事情により行使する必要があること、(5)他の共同相続人の利益を害するとは言えないこととされていて、とても難しい手続きになります。ですから、弁護士の関与なしに、この手続きによって預金の払い戻しを得ることはほぼできないと思います。

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