岩田誠司
2021年3月28日 11時00分

 消防団員なのに、消防車を運転できない――。そんな団員が各地で増えつつある。運転免許証の区分が変更され、普通免許で運転できる車両総重量が3・5トン未満になったためだ。新たな免許を団員に取得してもらうか、軽量で装備を絞った消防車に買い替えるか。自治体も現場も悩む。
 福岡県春日市で3月7日、市内五つの消防団が参加して防災訓練が開かれた。各団が配備されている消防ポンプ車(総重量約7トン)を川沿いにまわしてホースを川に下ろし、放水する手順を確認した。
 南分団からは7人が参加した。だが、このうち4人は運転できない団員だという。団員は全部で20人いるが、運転できるのは7人。分団長の小泉博之さん(37)は「火災発生を知って若い団員が詰め所に駆けつけても、運転できる団員がおらず現場に出動できないことがある」と話す。
 普通免許で運転できる車の総重量は、2007年6月2日以降の取得者は8トン未満から5トン未満に、17年3月12日以降の取得者は3・5トン未満になった。一定以上の大きさの車の運転手に高い技能を求めることで事故を減らすことなどが目的だった。消防団でこれまで使われてきた消防ポンプ車の主流は4〜7トン程度。これを運転するには準中型免許が必要だが、消防団は会社員や自営業者ら地元住人で構成され、多くは普通免許しか持っていない。このため、若い団員に消防車両を運転できない人が増えている。
 総務省消防庁の調査では、普通免許で3・5トン未満しか運転できない消防団員の割合は、昨年2月1日時点で全体の1・4%。これに加えて5トン未満のみの団員もいるため、消防車を運転できない団員はさらに多い可能性がある。

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