変異した新型コロナウイルスが九州・山口・沖縄でも広がり始めている。3月下旬に入って九州北部を中心に感染確認が相次ぎ、31日は新たに長崎、山口両県で各3人、佐賀、大分両県で各1人の感染が発表された。変異ウイルスが増加する関西地方を訪れた人の感染も目立っており、専門家は「人の移動が増える時期で、感染拡大地域から地方へと広がっている」と警戒を強める。(手嶋由梨)

 読売新聞が九州・山口・沖縄の9県の状況を集計したところ、31日現在、沖縄(31人)、福岡(11人)など8県の計67人が、変異ウイルスを調べる自治体のPCR検査などで感染が確認されていた。宮崎県はゼロだった。

 九州では2月16日、鹿児島県で知人同士の3人の感染が判明。その後は落ち着いていたが、3月19日に福岡県で初めての陽性例が確認され、同20日に大分県、同25日に佐賀県などと続いた。沖縄県を除き、感染力が強いとされる「英国型」が主流となっている。

 関西への訪問歴があるケースも相次ぐ。佐賀県では、県内の実家に帰省中だった大阪府在住の男性の感染が判明。山口、大分両県では、感染者の中に発症前、関西地方に滞在した人がいた。熊本県では、大阪府から親族の訪問を受けた後、感染が分かった事例があった。

 就職や異動、進学などで当面、県をまたいで移動する機会が増える。九州大学病院グローバル感染症センターの下野信行センター長は「人の移動が増えると感染のリスクは高まる。感染力が強いといっても感染対策は従来型と同じなので、飛沫ひまつ防止のマスク着用や手指消毒を徹底してほしい」と強調する。

 自治体は、変異ウイルスのPCR検査に力を入れている。福岡県は2月末、1〜2月に従来のPCR検査で陽性となった全検体の約11%で変異の有無を調べた。変異ウイルスはゼロだったが、3月からは全検体の約50%まで検査を拡充した。熊本県は2月中旬から全ての検体で変異ウイルスの検査を実施しており、山口、大分、長崎、宮崎の各県も全検体を調べている。

 一方、変異ウイルスの感染者について、国は原則、無症状でも全員を入院させるとしている。下野センター長は「感染者が増えれば、ベッドがすぐに埋まってしまう。軽症であればホテルでフロアを替えて療養してもらうなど、今のうちに柔軟な対応を考えておくべきだ」と指摘する。

読売新聞 2021/04/01 07:50
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210401-OYT1T50089/