福岡県内のアパートで1月、1人暮らしをしていたタクシー運転手の60代男性が亡くなっているのが見つかった。新型コロナウイルス禍で売り上げが減り、給料は月8万円台に落ち込んでいたという。体調不良で十分に働けず、「せめて14万円はないと暮らせない」とも漏らしていた。コロナ禍で生活や心が追い詰められ、誰にもみとられずに逝く人は少なくない。行政や支援団体は支援窓口への相談を呼び掛けている。

【画像】コロナ関連倒産の推移

 住宅街にある3階建てのアパート。男性の部屋には、趣味だった戦闘機の模型や、飲みかけのウイスキーのボトルがあった。片付けに入った弟は「酒は弱く、ストックしてまで飲むことはなかったのに。ストレスがあったのか」と異変を感じた。男性は自ら命を絶ったとみられている。遺書はなかったという。

 関係者によると、男性は昨年4月の緊急事態宣言後、売り上げの落ち込みで給料が減っていった。運賃収入の四十数%が手元に入る歩合制。夕方から翌朝まで働く夜勤担当だったが、客の目減りで稼ぎ時の深夜乗務が減らされ、午後10時までが中心になった。高血圧などで体調がすぐれず有給休暇を使い果たし、休むと欠勤扱いになったことも影響した。

 手取りは安い月で8万〜9万円台。11月は体調不良で3分の1しか働けず、8万円台。12月は15日ほど出勤したものの11万円台。1月上旬に12月分の給料が出た後、数日のうちに亡くなったとみられている。家賃を公費で補助してもらえる制度を利用していたが、年金や生活保護は受給していなかったという。

 ある知人は11月から2、3日おきに相談を持ち掛けられた。「薬がないと、きつくて仕事に行けない。でも病院代がない」「この給料じゃ生活できない」と明かされた。同業他社に移る話にもなったが、地理を覚え直さないといけない、と渋っていた。12月はそれ以前より出勤したものの、売り上げは伸びず、「どう働けば給料が上がるか分からない」。「せめて14万円」と繰り返していた。

 タクシー業界は全国で軒並み、コロナの打撃を受けている。国の調査では、客の数は昨年4〜12月に前年より25〜69%減った。男性の勤め先と同じ地域にあるタクシー会社の運転手は「売り上げはコロナで半分くらいになった。ほとんど稼ぎにならない」と嘆く

https://news.yahoo.co.jp/articles/b99c4fcc05fa5ad3db70e044202eec9fce2fbf6b
4/7(水) 11:12配信