2020年12月、男女が相次いで亡くなった。死の背景にあったのは処方された「薬」。ジェネリック医薬品製造メーカーの「小林化工」が製剤した爪水虫の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入していたという前代未聞の事件だった。

3か月後、今度はジェネリック大手「日医工」に業務停止命令が下った。


 これまでジェネリック薬の使用は国をあげて推進されてきた。しかし厚労省が掲げてきた使用割合を8割とする目標もほぼ達成したいま、信頼が揺らぎ始めている──。


(中略)


※成分が同じでも効きが違う

 ジェネリック薬の持つ不安要素は、ずさんさだけではない。循環器専門医の申偉秀さんは、そもそもジェネリックと先発品が同一であるというとらえ方は危険だと警鐘を鳴らす。


「先発薬が出る前には有効性や安全性を確認するために、厳しい臨床試験と承認審査が行われます。しかしジェネリックは、先発薬で一度審査を通っているという前提のもとで製造されるため、検査項目が少なく、先発品ほど厳しい検査は行われません」


 そのため、品質的に劣る可能性があるというのだ。


「『薬の一包化』を実施するケースがある。このとき薬を一度包装シートから出しますが、ジェネリック薬は保管時に変質しないか不安が残ります。というのも、先発品は温度や湿度を変えて成分に変化が起きないか厳しい検査をしていますが、ジェネリック薬ではそこまでの確認は実施されていないのです」


 加えて、成分が同一であっても、添加物の内容や製造工程などが異なれば効き方にも影響が出てくる。


「薬剤の混ぜ方や、塗り薬ならば肌につけたときにどのくらい伸びるかなどは各メーカー独自の技術があるため、簡単には真似できません。例えば季節性のアレルギー薬の有効成分である『フェキソフェナジン』や痛み止めの『ロキソプロフェン』などは、患者さんから先発薬とジェネリック薬で効き方が違うという声があがることが多い。


 元近畿大学薬学部教授の松山賢治さんも声をそろえる。


「代表的なのは、胃薬の『ランソプラゾール』。逆流性食道炎や胃潰瘍の治療でよく用いられますが、成分が非常に分解されやすい性質を持っています。そのためランソプラゾール配合の先発品『タケプロン』を開発した武田薬品は、分解を防ぐ技術を独自に開発している。つまり、たとえ成分が同じでも、独自の安定化剤の違いによって効き方にも違いが出ることがありうるのです」


 薬剤師の深井良祐さんは「医師によっては『この薬は絶対にジェネリックに変えてはいけない』と指定する場合すら存在する」と指摘する。


「例えば、気管支ぜんそくの患者さんに使われる貼り薬はゆっくり溶けて薬効成分が体に入り、長時間血中濃度を保つことが重要であるため、先発薬の『ホクナリンテープ』を指定するケースが多い。有効成分は同じでも、ジェネリックの薬は一気に溶けてしまい、危険であると指摘する医師が多いのです」


 申さんも、かつて医療現場において先発薬をジェネリック薬に切り替えた患者が、命にかかわるような事例を経験した。


「『冠攣縮性狭心症』を患っていたケースでした。『カルシウム拮抗薬徐放剤』で発作を抑えていたのですが、先発薬をジェネリックに変えた直後、急に胸の痛みを訴えて救急病院に搬送されたのです。先発薬に戻してすぐに容体は安定しましたが、一時は危険な状態でした」


 その後、申さんが受け取った救急病院の報告書には、「処方をジェネリック薬に変更して発症したと思われるので、もとの処方に変えてほしい」と書かれていた。


「『カルシウム拮抗薬徐放剤』は少しずつ有効成分が溶け出して作用するため、先発薬を使っていたときは冠動脈が縮まないようにギリギリの状態で広げていたのが、ジェネリック薬に変えた途端に戻ってしまい、わずかな効き方の違いで発作を抑えられなかったと考えられます。循環器の病気では、数値に表れない部分でそうした危険があります」


 命を救ってくれるはずの薬が、自分の首を絞めているとしたら、これほど恐ろしいことはない。


(中略)


 医師の診察を受ける段階で、ジェネリック薬をのんでも大丈夫なのかを確認し、心配なものは先発薬にしてほしい旨を医師に処方箋に書いてもらうといい。


 薬剤師からジェネリック薬をすすめられても選択肢は患者にあることを忘れてはいけない。


女性セブン2021年4月22日号

https://news.yahoo.co.jp/articles/322635b233991d218147c46797d30bf4a4fd993e?page=1