人口減少時代にも、住民が増え続けている名古屋市。しかし、市には長年の大きな悩みがある。若い世代を中心に、女性が首都圏に流出していることだ。この人の流れは変えられるのだろうか。(仲川明里)

■就活生「名古屋を離れたくない気持ちはあるけれど」

 名古屋市東区に住む浅田菜摘さん(21)は、愛知大学現代中国学部の新4年生。就職活動のさなか、目指しているのは東京に本社を置く物流企業だという。

 名古屋で生まれ、小中学生のころは、父の海外赴任に伴って台湾で暮らした。通訳など語学力を生かして海外と関わることができる仕事に就くのが夢だった。

 就活を始めた昨年夏ごろは、住み慣れた名古屋での就職を考えており、市内に本社があるメーカー数社のインターンや説明会に参加した。しかし、募集が営業職のみだったり、女性社員の比率が3割程度と極めて低かったり。結婚、出産しても働き続けたいと考える浅田さんにとって、「長年働き続けることが、想像できませんでした」。

 大学のキャリア支援センターに相談し、志望をメーカーから物流に変えた。面接を受けている企業数社はすべて東京に本社があり、海外関連の部門に力を入れているのが魅力だという。

 浅田さんは「名古屋を離れたくない気持ちはある。でも、本当にやりたいことをするために、東京で仕事がしたい」と話す。

 日本の人口が2008年をピークに減少に転じたのに対し、名古屋市の人口は1997年以降、24年続けて増加している。大きな要因は転入の多さで、市の調査によると、19年10月からの1年間で転入が転出を5337人上回った。

 しかし、各地域との人の流れをみると、20〜30代では首都圏(1都3県)への転出超過が目立つ。

 市は特に、女性の転出超過を懸念する。市男女平等参画推進室の鶴田恵子室長は、「若い女性や子育て世代の転出は、将来の労働力不足にもつながる深刻な問題」と説明する。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8b677a27981e361b7884df7fb5f98ed0ff7ab34e