有事の国産ワクチン開発、強化策議論開始 治験手法の見直し意見
毎日新聞 2021/4/16 20:31(最終更新 4/16 20:31)
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米ファイザーと独ビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチン=AP

 新型コロナウイルス感染症の国産ワクチン開発の遅れを受け、政府は16日、産官学でつくる「医薬品開発協議会」でテコ入れ策の本格議論を始めた。有事に国産ワクチンを迅速に開発・供給するための研究開発拠点の整備や制度的課題の見直しが焦点で、6月にもまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」に盛り込みたい考えだ。

 国内では4社が初期段階の治験を進める。ワクチン開発は通常3段階の治験で安全性と有効性を確認。最終段階では大規模な集団を本物のワクチンと「偽薬」を投与するグループに分け、接種後の感染の有無や副反応を比較する。参考人として出席した塩野義製薬の手代木功社長(日本製薬団体連合会会長)は、世界的に海外製ワクチンの接種が進む中、最終段階(第3相)の治験参加者を大規模に集めるのが難しくなっていると指摘。有事の対応として、一定の安全性・有効性を確認した上で第3相治験前に承認し、市販後に追跡調査で再確認する医薬品の「条件付き早期承認制度」のワクチンへの適用拡大を求めた。

 参考人の東京大医科学研究所の石井健教授(ワクチン学)は「(既に)周回遅れだが1年後に国産ワクチンを上市(販売開始)できるのか。治験にも破壊的イノベーションが必要だ」として治験の手法の抜本的な見直しが必要と訴えた。

 治験については世界の開発企業の共通課題となっている。厚生労働省と薬事審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、各国の規制当局間の議論を注視する考えを示した。【横田愛、矢澤秀範】