長野県の鉄道の旅をしようと思う。

 長野県はとにかく広い。もちろん北海道ほどではないけれど、本州の都府県でいうと岩手県・福島県に次ぐ広さを誇る。それでいて、海がない。県民誰もが歌えるという県歌『信濃の国』では、4つの平があると歌われている。松本・伊那・佐久・善光寺(長野)の盆地のことだが、つまりは長野県のほとんどが山であり、その狭間にいくつかの盆地があって、そこが地域の中核のような都市になっているというわけである。

となると、長野県の鉄道はそれらの盆地を結ぶことにその意義があるといっていい。もちろん東京やその他の地域から長野県を目指すとすれば、まずはいずれかの盆地を目的地にすることになる。そこに、長野県の広さゆえの最初の問題が立ちはだかってくるのである。

■新幹線か在来線特急か

 東京から長野県に入るには、主に2つのルートがある。1つは、かつては長野新幹線とも呼ばれていた北陸新幹線を使う一手。「かがやき」に乗れば1時間半もかからずに長野駅に着くし、「あさま」にでも乗ったら軽井沢、4つの平の1つである佐久平などにも行くことができる。まさしく、長野県入りの定石中の定石であろう。

 ただ、筆者などは東京の西側に住んでいるので、この新幹線ルートは少々めんどくさい。わざわざ長野県から遠ざからねば新幹線に乗れないからだ。そこでもう1つのルートだ。中央線特急「あずさ」である。

 特急「あずさ」は信玄公と信玄餅でおなじみ甲府を経て長野へ入る。諏訪湖畔をぐるりと回り、JR東日本とJR東海の境界でもある塩尻駅からは篠ノ井線に直通。そのまま目指すは松本駅だ。

 松本は、4つの平の1つであり、長野県内では長野市に次ぐ第2の都市だ。つまり、新幹線で県都・長野を目指すか、それとも「あずさ」で松本を目指すかという選択を、ハナから突きつけられるというわけだ。いやはや、実に難しい問題である。

 長野か松本か、その二択への答えはどちらの街に目指す観光地があるかとか、食べたいグルメがあるだとか、そういうところを基準にしてそれぞれが考えていただければいい。なので、実際にはそれほどの問題でもないのだが、とにかくここでは“鉄道”という観点でそれぞれのルートを比較してみることにしよう。

 まずは長野ルートだ。かつて、碓氷峠の難所を越えていた信越本線は今はなく、北陸新幹線は釜めしを買い求める間もなくトンネルで上信国境をひとっ飛び。このルートにおける長野県の玄関口は軽井沢である。

軽井沢から在来線に乗り換えるとすると、信越本線が転換された第三セクター路線・しなの鉄道線になる。しなの鉄道線は小諸・上田を経て篠ノ井までを結ぶ路線だ。

 信越本線時代には幾多の特急が走っていたが、今では通勤ライナー的な快速列車が走る程度のローカル線になった。上田に本拠を置いた戦国武将・真田氏の六文銭にちなんだ観光列車「ろくもん」も走り、北側に浅間山を望む車窓も見どころの1つで、小諸から篠ノ井までは千曲川に沿う。

 しなの鉄道線が通る街のうち、小諸は4つの平の1つ、佐久平にあってJR小海線との乗換駅でもある。小海線のお話は後に譲るとして、次いで上田駅。上田駅からは上田電鉄別所線というローカル私鉄が分かれている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ac0f06dc12313f86dd6a13afe846b88ee11f9d02?page=3
5/7(金) 4:31

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