毎日新聞 5/11(火) 21:27

 新型コロナウイルスの感染拡大で福岡県にも12日から3回目の緊急事態宣言が発令される。今回は酒類を提供する飲食店に休業を要請するなど、営業時間の短縮要請が柱だった2回目より制限が強化される。ただ独自に大型商業施設の休業要請を継続する東京都や大阪府に比べれば緩く、専門家からは「変異株が猛威を振るうなか、効果が出るかは未知数だ」との指摘もある。

 「東京や大阪のように休業を求められた場合の対応も検討していたので、正直なところほっとしている。とはいえ、早く感染者を抑えないといけない状況でもあり複雑な気分だ」

 福岡市内の大型商業施設の広報担当者が本音を明かした。福岡県は今回の宣言で床面積合計が1000平方メートル超の大型商業施設に午後8時までの時短を要請。宣言延長に伴い、休業要請を継続する東京都や大阪府と対応は分かれた。

 福岡県でも1回目(2020年4、5月)は商業施設への休業要請や学校の一斉休校など厳しい制限を課したが、2回目(21年1、2月)は飲食店を中心とした午後8時までの時短要請にとどめた。3回目となった今回は酒類提供店への休業要請や「路上飲み」の自粛要請なども盛り込み前回よりは強化した。だがそれ以外はほぼ同様の内容で一斉休校はなく、保育所なども原則開所を求める。イベント開催の観客制限は5000人か収容率50%の少ない方が上限で、企業には出勤者7割削減を要請する。

 前回に続き飲食を伴う感染リスク対策を宣言の柱に据える福岡県に比べ、東京都や大阪府の措置はより厳しい。東京都は大型商業施設だけでなく、1000平方メートル超のスポーツクラブや映画館、ボウリング場にも休業要請し、1000平方メートル以下の商業施設にも休業協力を依頼。大阪府はプロ野球などのイベントで無観客開催を引き続き求める。

 大型連休前に始まった4都府県への宣言は「人流(人の流れ)の抑制」を主眼に短期集中での対策を目指していた。ところが政府は、宣言延長に伴う経済への悪影響を避けるため方針を転換し、対策の軸足を「夜の人流抑制」に移した。感染力が強いとされる変異株が広がる中、東京都や大阪府が独自の措置を継続したのに対し、国の考えに沿った対応をしたのが元々経済活動を重視し、緊急事態宣言も要請していなかった福岡県だった。

 もっとも、強い対策を続けている東京都や大阪府でさえ、思うように感染増を抑制できていないのが現状だ。4都府県に宣言が出た4月25日までの直近1週間と、当初の宣言期間だった5月11日までの直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は東京都で13%増加。東京より深刻だった大阪府では22%減ったとはいえ、いずれもステージ4(感染爆発)の基準(10万人当たり25人)を大きく上回る状況は変わらない。

 福岡県も4月22日から福岡市内の飲食店を対象に始めた時短要請を25日から久留米市に広げ、5月6日からは全県に拡大するなど対策を徐々に強化したが、この間に新規感染者数は73%増加。10万人当たり56・6人と東京都(41・4人)と逆転した。

 大型商業施設への休業要請の可能性について福岡県の服部誠太郎知事は11日の記者会見で「感染状況を十分に踏まえ機動的な対応が必要だが、慎重に判断しないと現場や県民の皆さんに混乱を生じる。必要であればちゅうちょなく判断したい」と話した。

 県内の感染者の入院調整を担当する九州医療センターの野田英一郎・救命救急部長は「変異株が広がるなか、福岡もかなり厳しい感染状況にある。夜の会食制限などで感染者が減らない場合は、昼間の会食まで制限を広げるか、人の流れを抑制する海外の『ロックダウン』に近い措置が求められる可能性があり、これからが正念場だ」と警鐘を鳴らす。【光田宗義、谷由美子、植田憲尚、平川昌範】

https://news.yahoo.co.jp/articles/3da901d7c5cd9be8c7570b314f5d3524076590f9
3回目の緊急事態宣言発令に伴い、福岡市地下鉄の最終電車の繰り上げを知らせる天神駅の掲示=福岡市中央区で2021年5月11日午後5時42分、徳野仁子撮影
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