雇用を絶対視してきたパナソニックが、本格的な人員整理に乗り出した。
多くの日本企業が過剰雇用問題を抱えているが、政府による事実上の生涯雇用義務付けによって人件費負担はさらに増える見込みである。
雇用を聖域としてきたパナソニックのリストラは、日本がいよいよ本格的な人材流動化時代を迎えたことを象徴している。

■諸外国の企業における社員数は日本の3分の2

 パナソニックが50代の中高年社員をターゲットに早期退職制度を大幅に拡充するというニュースが話題となっている。
大手企業で大規模な人員整理に踏み切るケースはこれまでもあったが、パナソニックは長年にわたって雇用を聖域視してきた企業である。

 創業者である松下幸之助氏は「事業は人なり」をモットーにしており、雇用維持を何よりも大事にしてきた。
幸之助氏が死去した後もこの社風は受け継がれ、ライバルのソニーとは異なりパナソニックは苛烈なリストラは実施してこなかった。

 今回、行われる早期退職プログラムは、退職金を最大4000万円上乗せするというもので、かなりの大盤振る舞いといってよい。
上乗せ退職金の額が大きいということは、会社側の本気度が高いことの裏返しでもある。

 雇用を重視してきた同社が人員整理に踏み切らざるを得なかったのは、日本企業の過剰雇用が限界に達しているからである。
日本の労働生産性が先進国中ずっと最下位であるという事実はようやく多くの人が知るようになったが、生産性が低い原因の一つは過剰雇用である。

 日本と米国の生産性データを比較すると、日本企業は1万ドルを稼ぐために29人の社員が7時間労働する必要があるが、米国は同じ7時間の労働で社員数は19人で済んでいる。
つまり、日本企業は同じ金額を稼ぐにあたって、より多くの社員を雇用しており、これが生産性を引き下げる大きな要因となっているのだ。

 リクルートワークス研究所の調査によると、日本国内には会社に勤務しているにもかかわらず、実質的に仕事がないという、いわゆる社内失業者が400万人も存在しているという。
これは日本の全正社員の1割に達する規模である。

 生産性から得られる理論値においても、実地による調査結果からも、日本企業が過剰雇用を抱えていることは明らかである。
雇用が過剰であれば、1人あたりの賃金も下がるので、これが日本の低賃金に拍車をかけている。
ビジネスモデルを抜本的に変えて、超高収益体質にでも転換できない限り、今のままでは賃金は上がりようがない。

(以下略、全文はソースにて)
https://news.yahoo.co.jp/articles/535c019c1eed91131358874e278d0d5579118cd7