緊急事態宣言が出て正職員は在宅勤務しているのに、非正規の私たちは出勤させられる―。
広島県内の非正規労働者から「テレワーク格差」を訴える声が上がっている。出勤が嫌なら辞めろと言われたり、有休を使えと求められたり。
国は出勤7割減を目指すが、「非正規」のテレワーク経験は「正規」の半分以下とのデータもある。不公平さがコロナ禍でより際立っている。

 編集局に寄せられた匿名のはがきには「出勤が嫌なら辞めろという環境。私たちにも家族がいて感染が怖いのに」とつづられていた。
差出人は国の出先機関に勤める非正規公務員。在宅勤務中の職員の仕事まで負担させられ、納得がいかないという。

 働き方の選択肢がないことへの不満はあちこちに渦巻く。「うちの職場も同じ」と話すのは県東部で相談員をする50代女性。
正職員は分散勤務を指示されたのに、非正規への声掛けはない。抗議すると「家にいたいなら有休を使って」と返された。家で仕事がしたいだけで、休みたいわけじゃない。あきれて言葉を失った。
「収入途絶える」

 しかも有休は昨年、20日から10日に削られたばかり。病気などに備えて使いたくないから、我慢して出勤するしかない。
長い間、待遇面の差別に耐えてきたが、今回は感染リスクにさらされ「命の格差すら感じる」と憤る。

 県内の自治体で働く非正規職員は「感染したら収入が途絶える」とおびえる。昨年感染した同僚は後遺症で1カ月休んだが、その間の給料はゼロ。
有休を使い切っており欠勤扱いになった。病に苦しみながら生活の心配をしないといけない状況に「私たちは真っ先に切り捨てられる存在」とあらためて感じたという。

 環境整備も遅れている。高齢の親と同居する広島市の40代派遣社員は、貸与パソコンがないことや情報漏えい対策が難しいことを理由に、在宅勤務の希望がかなわない。
データ入力が主な業務で、会社からしかシステムに入れないのだという。仕方なく出社し、在宅勤務をする正社員の代わりに、宅配便の受け取りや電話番も引き受けている。
「非正規はテレワークに必要な基盤も整えてもらえない」とため息をつく。

不合理な待遇差

 内閣府の昨年末の調査によると、テレワークをしている人の割合は、年収300万円未満では12・7%だったのに対し、年収1千万円以上は51・0%。
テレワーク経験があると回答したのは正規42・2%、非正規18・0%だった。厚生労働省は今年3月に出した指針で、テレワーク導入について雇用形態で差別しないよう促すが効果は不透明だ。

 非正規労働者の問題に詳しい広島弁護士会の寺本佳代弁護士は「テレワーク可能な仕事なのに非正規というだけで認めないのは、
不合理な待遇差として法律違反の可能性がある」とみる。一方で「非正規はもともとテレワークができない業務が多く、雇い止めへの不安から声を上げにくいという構造的な問題がある」と指摘している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7701b709a91a9b2b7afe344c88ed48cd803281d1?page=1