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政府は17日、沖縄県を除き、東京や大阪など9都道府県への緊急事態宣言を20日の期限で解除することを正式に決める見通しだ。ワクチン接種も徐々に進むなか、経済回復への期待も出てきている。しかし、1年半にわたるコロナ禍は、立場の弱い働き方をする人たちに大きな打撃を与え、雇用の現場では格差が深刻化している。

東海地方に住む30代の女性が解雇を経験したのは昨年の初夏、1度目の宣言がようやく終わったころだった。

 派遣社員として地元の自治体の文化施設で長く働いてきた。来場者を会場に案内し、気持ちよく過ごしてもらう仕事にやりがいを感じていた。

 だが、国内で昨年1月以降、新型コロナウイルスの感染者が増加。宣言は4月中旬には東海地方を含む全国に拡大された。女性が働く施設も臨時休館を余儀なくされた。ほどなく所属する派遣会社から解雇予告通知が届いた。

政府は当時、従業員を休業させて雇用を維持した企業に配る雇用調整助成金(雇調金)をフル活用するよう企業に呼びかけていた。派遣社員の場合、3カ月単位の契約更新も多く、6月末で契約を打ち切られる人が続出する「6月危機」が懸念された。このため、加藤勝信厚労相(当時)も5月下旬、経済団体に安易に雇い止めをしないよう要請。人材派遣業界には、新たな派遣先がない場合でも、雇調金を使って働き手を休ませ、派遣先が見つかるまで雇用を維持する対応を求めた。

だが、要請には強制力はなく、すでに解雇予告通知を受け取っていた女性の助けにはならなかった。5月末、派遣会社から予告通り解雇された。「納得はできない。でも、結局は泣き寝入りするしかなかった」

 弁護士や労働組合にも相談したが、解決策はなかった。「国がいくら雇用を維持しろと言っても、会社が切ればそれまで。国の支援策からこぼれ落ちる人はいくらでもいる」

 女性は就職氷河期世代。就職活動で苦労し、正社員になれなかった。日本では、新卒で正社員になれないと、非正規での働き方が固定化しがちだ。そこに襲ったコロナ禍でその派遣の仕事も失い、女性は精神的にも限界だった。

解雇後、職探しをしたが新たな仕事はみつからなかった。前職のように人に接する仕事がしたいと考える一方、「感染が拡大するたびに仕事がなくなり、またクビになるのでは」という考えが頭をよぎり、就職活動もいまは中断してしまった。それだけに、感染の拡大につながりかねない東京五輪の開催にこだわる政府の姿勢にも強い違和感を覚えるという。「五輪よりも国民の命の方が軽いってことなのかな」

■雇用下支え策、機能したように見えるが…
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