政府内で29日、企業・大学を対象とする新型コロナウイルスワクチン職場接種の申請受け付け一時停止の長期化が避けられないとの見方が強まった。
企業や大学からの希望が殺到し、使用する米モデルナ製ワクチンの輸入ペースが追い付かないためで、再開の見通しは立っていない。

与党からは、国と自治体の大規模会場に割り当てた米モデルナ製1700万回分(850万人分)の一部を
企業・大学向けに回して早期再開を求める意見が出ている。

申請受け付けは25日午後5時で一時停止した。今後の対応について菅義偉首相や河野太郎行政改革担当相らが調整を進めており、
30日に官邸で開く関係閣僚会議でも協議する見通しだ。

加藤勝信官房長官は29日の記者会見で、職場接種の扱いについて「現時点で決まったことはない」と述べるにとどめた。

政権内では、新型コロナ対策の切り札としてワクチン接種加速化を最優先課題に掲げている首相は、職場接種の継続に意欲を示している。
ただ企業などからの申請が想定を上回っており、ワクチン確保は容易ではない。

与党からの要請などを受け、政府内でワクチンの配分変更などを検討しているが、
官邸筋は「それでも本格的な再開にはワクチンが足りない」と指摘する。

「継続を目指しているが、結果的に打ち切りとなる可能性もある」と話す政府関係者もいる。

29日に開かれた自民党会合では、複数の出席者から「頑張って準備してくれている企業・大学を優先すべきだ」などの意見が相次いだ。

河野氏は29日の会見で、ワクチン接種を実施する自治体や職場への配送完了時期について
「10月中には所定の場所に配送される」との見通しを示した。

職場接種は企業などが従業員らを対象に新型コロナウイルスワクチンを接種すること。
高齢者を先行させている自治体の接種を補完し、一気に加速させる狙いがある。
対象に従業員の家族や地域住民らも含めることができる。

希望する企業は政府の専用サイトから申請。自治体による接種の妨げとならないよう、接種に当たる医師や会場は企業が自ら確保する必要がある。

同じ会場で最低千人程度に2回接種するのが基本。企業の職場接種と並行して、大学も学生らへの接種準備を進めている。
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/55470