2週間後に開幕が迫った東京オリンピックは緊急事態宣言下で開催されることになった。

新型コロナウイルスの感染拡大により東京都に宣言が出されるのは4回目。宣言期間は6週間に及び、東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県にある五輪競技会場は無観客となる見通し。日常生活が制約される中で開かれる世界的な祭典を人々はどう受け止めるのか。

東京五輪、首都圏4都県は無観客の方針固める

 昼下がりの東京・渋谷。友人と待ち合わせ中だった東京都目黒区の主婦、時松房江さん(75)は「コロナ下でのオリンピックはおかしいと思うが、いまさら後に引けないのだろう」と推し量る。無観客での開催について「張り合いがなく選手はかわいそうだが、仕方がない」と話す。

 杉並区の女性会社員(35)は2年前に観戦チケットを申し込んだものの抽選で外れた。「地元での大会を楽しみにしていたが、今となってはテレビで見るかも分からない。オリンピックより早く日常を取り戻して」と訴える。接骨院に勤務する西東京市の男性(22)は「開催するということは感染対策をとっているということだろう」と話した。

 東京・銀座にいた会社員、串田昇さん(66)は「緊急事態下での開催は矛盾している」と疑問を抱く。「観客を入れるかどうかも最後まで決まらず混乱している。もっと早い段階で(大会の)中止を決断してもよかった」と厳しい目を向ける。

 宣言の再発令と五輪の無観客が重なれば、街の活気は再び失われそうだ。銀座に店を構える老舗パン店「銀座木村家」の上野仁さん(45)は「年配のお客様は外出を控えるだろう。売り上げに響く」。とんかつ店「銀座かつヰチ」店長、徳堂晴久さん(47)は「銀座の街に観戦客が流れてくると思っていたが、全く期待できなくなった」と嘆いた。

 街頭では「コロナ慣れ」や「自粛疲れ」から4回目となる宣言の効果を疑問視する声も多く聞かれた。東京都では3回目の宣言解除からわずか20日あまりで、再び酒類の提供停止と午後8時までの時短営業措置がとられる。度重なる要請に振り回されてきた飲食店主からは怒りの声が上がる。

 東京都調布市の居酒屋「熱熱々鉄器(てつなべ)ぎょうざ家」店長、中條哲也さん(50)は「この1年間、五輪開催ありきの政策の陰で飲食店ばかりが犠牲になってきた」と憤る。

 店は五輪のサッカーやラグビーの競技会場となる味の素スタジアムに近く、本来なら店内は観戦客であふれるはずだった。大会中は自宅でテレビ観戦する人が多いとみられ、「酒を出せず、スタジアムも無観客なら、大会期間中に客は来ないのでは。間近で歴史的イベントが開かれるのに寂しい」と嘆いた。

 近くにある居酒屋「魚亥子(うおいね)」代表の栗山大秀(ともひで)さん(50)は「酒を出せないのは痛いが、都の協力金に助けられている。開催が決まった8年前は店が大繁盛すると期待したが、全く違う形になってしまった」と肩を落とした。

 観戦を楽しみにしていた人も怒りの声を上げる。2006年トリノ冬季五輪以降、夏冬の全7大会を現地で観戦し「オリンピックお兄さん」の異名を取る東京都渋谷区の不動産業、滝島一統(かずのり)さん(45)は「決断が遅すぎる。本当に腹が立ちます。無観客にするんだったら、せめて3カ月前ですよ」と語る。大会期間中は仕事の都合を付け、観戦のために予定を空けていたという。

 払い戻されたとしても「チケットを手に入れるのに、ものすごい労力を費やしているし、観戦のためにいろんな予定を組んでいる。お金の問題じゃない」。19年6月にあったチケット抽選は全て外れてしまったものの、抽選に当たった多くの友人らが「一緒に行こう」と工面してくれた。その努力が水の泡になった。

 競技のテレビ観戦については「楽しみは5分の1になります。競技場とは空気感が違う。カメラは自分が見たいところを必ずしも撮るわけじゃありません」と語った。

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