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福岡地裁=福岡市中央区で、吉川雄策撮影

「送信機電池切れで父死亡」と飯塚病院提訴 異常通知なく脳死状態に
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 2020年に福岡県飯塚市の飯塚病院で入院中だった父親(当時84歳)が死亡したのは体の異常を知らせる送信機の電池切れが原因だったとして、福岡県直方市の自営業の男性(48)が同病院の運営会社の麻生に2881万円の損害賠償を求める訴えを福岡地裁に起こしていた。13日に同地裁(松葉佐隆之裁判長)で第1回口頭弁論があり、運営会社側は請求棄却を求めた。提訴は5月20日付。

 訴状などによると、父親は20年6月13日に誤嚥(ごえん)性肺炎で入院。一時回復したが、同25日朝にたんをのどに詰まらせた際に体に取り付けた送信機が電池切れでナースステーションにあるモニターに異常が通知されず、父親は脳死状態となった。同日午後に医師らが親族に対し「管理不足があった」と謝罪。その2日後に父親は呼吸不全で死亡した。

 しかし、病院側はその後「死亡はあくまで誤嚥性肺炎が原因で、送信機の電池切れは関係ない」と説明したため、原告側は「責任はないの一点張りで、裏切られた。防げる事故だった」として提訴に踏み切った。取材に応じた原告の男性は「父は回復が進み、脳死した日は転院に向けた話し合いの予定だった。もっと長生きできたはずだ」と話している。

 一方、飯塚病院は取材に対し「係争中につき差し控える。主張は訴訟で明らかにしていく」としている。

 送信機は小型トランシーバーのような形状で、患者の心拍数や血中酸素飽和度を計測し、異常を感知したら電波でナースステーションなどにあるモニターに知らせる。公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)によると、電池切れによる事故が11〜20年に10件あり、19年には神戸市の病院でも誤嚥性肺炎で入院していた40代男性の呼吸停止に気づくのが遅れる死亡事故があった。同法人などは曜日を決めた電池交換や電池切れ表示の確認など対策を呼びかけている。【平塚雄太】