東南アジア各国で、再拡大する新型コロナウイルス対策が難航している。
第1波で封じ込めが成功した国もワクチン確保に出遅れ、感染力の強いインド由来の変異株「デルタ株」が流行。

医療体制の逼迫や都市封鎖の長期化で経済回復の先行きは見えず、「対策の失敗」が政争の具に利用されている国もある。

インドネシアでは今月に入り、この地域で初めて累計死者数が10万人を超えた。5月下旬以降だけでその半数を占める。
ジャワ島やバリ島では7月から、商業施設の営業禁止や在宅勤務などの行動制限で人流を減らし、新規感染はピークを越えたとみられるが、
1日の死者は依然として1500人以上。政府は規制緩和の方向だが「経済優先で対策が不十分」との懸念がある。

マレーシアも6月から全国的な都市封鎖を続けるが、感染拡大は収まらない。
新規感染者が8月5日に初めて2万人を突破した。

「コロナ対策の失敗」の矛先は支持基盤の弱いムヒディン首相に向き、政争の火種になっている。
9月の議会では首相の信任が問われる見通しで、政治の混迷が深まれば、さらに経済回復の足かせとなる恐れがある。

首都バンコクなどで夜間外出禁止令や営業制限など厳格な都市封鎖をするタイでは、新規感染者の7割からデルタ株が見つかっている。

公立、民間病院ともに病床使用率は9割以上とみられ、PCR検査や入院治療はパンク状態。
政府は、軍や空港施設への仮設病院設置に追われている。

地方病院の医師ワリーサラさん(29)は「医療従事者の間でも感染が深刻で、スタッフの顔触れが毎日替わり現場も混乱している。
医療用マスクですら再び不足し、消毒して繰り返し使っている状況だ」と訴えた。

ワクチン接種率は東南アジアの多くの国で一桁台にとどまっている。

接種が中国製ワクチンに偏っていた国では、中国製の有効性が不安視され、欧米製の確保に懸命になっている。
タイやインドネシアでは中国製ワクチン接種済みの医療従事者らへの追加のブースター接種が始まっている。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/122730

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