※2021/08/22 09:08読売新聞

 店や施設をグーグルで検索すると、地図とともに表示される口コミ欄。そこに投稿された低評価を全て消去し、新たに高評価に書き換える複数の専門業者の存在が、読売新聞の取材で明らかになった。人々の商品選びだけではなく、行き先にも影響を及ぼすネットの口コミ。業者がターゲットにするのは、評判に敏感な町のクリニックだという。(田中俊之、桑原卓志)

 「書き込むのは、うちの社員。同じアカウントで何回もやればばれるので、複数を使い分けている」

 東京都内の業者の社長が、手口の一端を明かした。

 2年前から「口コミ対策」と銘打ったビジネスを開始。受注したのは計約400件に上り、依頼者は不動産や美容関連もあるが、7割は医療機関だという。

 グーグルでは、地図に表示される様々な場所に利用者が感想を書き込める。5段階の評価を「★」の数で付ける仕組みで、この平均が評価点(最高5)として上部に表示される。

 口コミは通常、評価を付けられた側が消すことはできない。グーグルに削除を依頼することはできるが、攻撃的な内容など明確に規約違反に当たると判断された場合しか認められず、難しいとされる。

 しかし、この社長は「弊社の独自の技術ですべて非表示にできる」と言う。

 成功報酬は50万円程度で、さらに「口コミ維持管理サービス」として1件1万数千円の料金で高評価の投稿を請け負っている。社長は「評価が低いクリニックを調べて、営業攻勢をかけている」と話した。

 この業者が客に配布している資料では「評価3・5以下なら大変なことになります」と、風評被害で業績が落ちると強調。契約を結んだクリニックの例として、「2・3だった評価が4・0になりました」などと紹介している。

 関西の耳鼻科クリニックには今年4月、この業者から電話がかかってきた。

 男性院長は「金で買うのはよくない」と勧誘を断ったが、営業担当者は「(口コミ欄を)リセットして再スタートできます」「患者さんの感謝の言葉を書き込みます」と話した。

 同じような業者は他にもあり、各地のクリニックに「ネガティブな口コミを放置すれば、信頼を損ないます」などと不安をあおるようなダイレクトメール(DM)が届くことも多い。

 関東の産婦人科クリニックの口コミ欄には2月、男性医師が女性患者にセクハラ発言をしたかのような苦情が投稿された。

 男性医師は全く身に覚えがなく、その直後、ある業者から送られてきたDMを見て不審に思った。問題の投稿の写真が掲載され、「新たな口コミで総合評価点を底上げします」と書かれていたからだ。

 「最初から業者が自作自演でやっているのではないか」。男性医師は今も疑念を抱いている。

 こうした行為が横行する背景には、特に病院選びは口コミを気にする人が多いという事情がある。

 しかし、グーグルの口コミ欄はアカウントさえあれば誰でも投稿でき、信用性が担保されていないことを知らない人もいる。

 通販サイト「アマゾン」では、投稿に商品の購入者かどうかが表示されるが、グーグルの場合は患者や客を装って評価を付けていても、第三者には分からない。

 グーグルの利用規約には「投稿は実際の体験や情報に基づくものでなければならない」とあり、なりすまし行為は削除やアカウント停止の対象になるはずだ。

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