新型コロナウイルス感染拡大が続く中、菅義偉首相の発信力の弱さが際立っている。

 記者会見で質問に正面から答えず、原稿の棒読みも目立ち、「説明不足のイメージが定着した」(自民党関係者)との指摘も。緊急事態宣言の対象追加でも野党から「小出し」と批判されており、政権浮揚の材料は見当たらない。

 「私の言葉について厳しい指摘を頂いた。しっかり受け止め、真摯(しんし)に対応していきたい」。首相は25日の記者会見で、コロナ対応に関する首相の言葉が国民に届いていないと指摘されると、神妙な面持ちでこう答えた。

 政府が宣言対応を決めた後に、首相が会見に応じるのは慣例だが、官邸サイドは当初、今回は宣言の追加にとどまることを理由に「会見は必須ではない」(高官)と見送りを模索していた。だが、見送る場合の「説明不足」批判を恐れたとみられ、一転して25日朝に開催が固まった。政府高官は「24日から首相が考えて適切に判断した」と説明した。

 ただ、「パフォーマンスが不得手」(自民党関係者)とされる首相に、説明責任を果たそうとする姿勢は見られない。宣言をめぐり関係閣僚と協議した23日、首相は内閣記者会の取材要請を拒んだ。取材に応じた翌24日は宣言追加を明かしたが、取材はわずか2分間。今年2月に18分間の取材に応じたケースと比べると差は歴然。政府側が取材を打ち切ったため記者団が追加質問したが、首相は見向きもせず立ち去った。

 首相は会見での発信力強化のため、演台の両脇に置いたプロンプター(原稿映写機)を使うが、視線が定まらず使いこなしているとは言い難い状況だ。党中堅は「原稿を読んでばかり。自分の言葉で話し方を練習してほしい」と注文を付ける。政府関係者は「会見すればするほど内閣支持率が下がる」と嘆いた。

 宣言追加などへの対応も相変わらず「小出し」対応が続く。17日に7府県の追加を決めたばかりで、25日に8道県を宣言に加えたが、自治体の要請をほぼ丸のみした形。野党は「バナナのたたき売り状態だ」(立憲民主党幹部)と批判した。

 衆院議員の任期満了(10月21日)が迫る中、自民党内では「首相では戦えない」との声が広がる。お膝元の横浜市長選で首相が全面支援した候補が敗れたのは、首相のコロナ対応が要因とみられている。

 首相はワクチン接種の加速に期待をかけるが、期限の9月12日までの解除は困難との見方が出ている。政府高官は「必要なら延長する」と指摘せざるを得なかった。 


https://news.yahoo.co.jp/articles/4b68f5ef4798683a66bfdbedbc47259224f291c6

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