「従業員の生活を守りたい一心で、強い心で笑顔を作りますが、それも、もう限界を感じます」「この業界は持ちこたえられないと考えます」――。8月下旬、新潟県柏崎市のスナックのママら約40人による直筆の要望書が市議会に届けられた。コロナ禍が長引く中、「声を上げよう」との女性経営者の訴えに応じたものだった。

 呼びかけたのは同市東本町1丁目の「ラウンジ マーメイド」オーナー、佐藤和子さん(50)。

 「南町」と呼ばれる飲食店街で、11年前から店を経営する佐藤さんは「感染防止対策を施し、県外からのお客様をお断りするなど努力をしているのに、夜の街での飲食が『悪』のような状況になってしまった」との思いを募らせていた。同業者と厳しい経営状況に関して話すうちに、「現場の生の声を集めて、まず市政に届けよう」と考えた。

「このごろはゼロか1人、多くて2人…」
 「みんなの声を聞かせてください」と記されたアンケート用紙を作成。お酒を仕入れているノマタ酒店の五十嵐健也社長(51)や、賛同した他店のママらの協力を得て、7月上旬から南町や新花町のスナックなど約100店に配布した。

 回収された用紙の記入欄には「家賃、駐車場、カラオケレンタル料などの支払いができない」「このごろはゼロか1人、多くて2人のお客様、という具合で、この日がいつまで続くか不安」……多くが丁寧な文字でつづられていた。

 補助金の支給や飲食店従業員へのワクチン接種を求める意見のほか、市長や市議に「少人数で短時間の飲み会を」と呼びかけてほしい、との要望もあった。

 約40枚のアンケート用紙を受け取った真貝維義議長は8月27日、新型コロナ対策に関する市議会の会議で、用紙の束を手に「何らかの支援策が必要だ」と強調。30日に桜井雅浩市長に対して、飲食業者への「更なる支援」を求めた。

 佐藤さんは「支援も大切だけど、国や県、市には一日も早い感染抑制に取り組んでもらいたい」と話す。五十嵐社長は「飲食店は街の景気のバロメーター。先行きを楽観するのは難しいが、飲食店を明るくするための策を講じることが、経済活動の回復につながると思う」と話していた。(戸松康雄)

朝日新聞 2021/9/5 10:20
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