https://www.asahi.com/amp/articles/ASP4W76JRP4WULZU00S.html?__twitter_impression=true

就任から丸8年がたった日本銀行の黒田東彦総裁の残り任期が2年となった。2013年春の就任早々、はなばなしくぶちあげた「2年で2%インフレ目標の達成」の公約はとっくにほごにしているが、黒田総裁は27日夕、金融政策決定会合後の定例記者会見で、みずからの任期中の目標未達が決定的になったことも認めた。10年かけても達成できないことについては「残念だ」と述べた。


 「残念」は反省の言葉のようでいて実はそうではない。ましてみずからの責任を認める言葉でもない。達成できなかった要因は環境の悪さにあり、ついていなかったのだ――黒田総裁はそう言いたかったのだろう。

 総裁が目標未達の理由としてあげたのは、たとえば原油価格の下落、携帯電話料金の値下げなどだ。これらがたまたま強い物価下落圧力になったという。

 さらに日本の消費者には物価に対して「粘着的で適合的な期待形成」があるとも強調した。つまり一度染みついたデフレ思考はなかなか変わらない、だから人々のインフレ期待になかなか火が付かないという趣旨だ。


 こうした説明は、「2年」の公約期間を過ぎ、3年、4年……とたっていくなかで日銀が繰り出してきた言い訳の定番である。

 だが言い訳もいよいよ苦しくなってきた。2年や3年ならば物価が上がらなかったのは「たまたま原油価格が上がらなかったから」「ケータイ値下げラッシュと重なってしまった」といった説明でも通用するかもしれない。だが10年となるとどうか。10年の間にこうした経済的イベントがまったくないという社会はありえないからだ。


 新型コロナウイルスの感染拡大のようなパンデミック(感染大流行)でさえ、いまや10年に1度くらいのペースで起きてもおかしくないと言われる。それらを理由に物価が上がらなかったと説明するには、10年という時間軸は長すぎる。

 そもそも物価はもっと経済の構造的な要因によって動くものではないか。「たまたま起きた」という要因がいくつかあっても、実現可能な目標なら十分にそのための時間はあったはずだ。

続きはソースにて