◆収入面も精神面も、きつかった
 8月上旬。アルバイト先のスーパーで仕事着に着替え、売り場に出ようとした際、携帯電話が鳴った。2歳の娘を預けている認可保育園からだ。
 「新型コロナウイルスの陽性者が複数出ましたので、今から休園になります。迎えに来てください」
 焦った。上司に事情を話してなんとか休みをもらい、保育園へと急いだ。
 横浜市に住み、2歳の娘と小学校低学年の2人姉妹を1人で育てる40代の女性。学校での講演などが収入源だったが、コロナ禍で仕事は激減した。家計の足しになればと、昨年5月からスーパーでバイトを始めた。実家が営む店の手伝いも掛け持ちする。

こんな状況に休園が重なった。「ただでさえ身も心もぼろぼろなのに、休園は収入面でも精神面でもきつかった」。2歳の娘はまだ、1人で遊んだり食事をしたりできない。抗原検査で娘は陰性だったが、代わりの預け先は見つからなかった。となると、バイトなどを休んで育児するしかない。約10日間預けられず、暮らしのため、貯金を取り崩した。

 女性は「子どもの検査結果が陰性なら一時的にでも預けられる場所がほしい。助成金や家賃補助があったら助かる。医療だけでなく親も逼迫している現状に、政治は全く目を向けていない」と憤る。

◆こんなに休むと、仕事は進まない
 横浜市では、今年7月以降の「第5波」で保育園の休園が急増した。市によると、8月中に1日でも休園した保育園の数は、259園。7月の53園から、4倍以上に増えた。昨年度の休園数は127園にとどまっており、8月の多さは際立つ。
 背景には、保育園での子どもの感染者増がある。市では8月、380人の保育園児が感染。保育士らの感染者数は299人で、初めて園児の感染者数が保育士らを上回った。
 「こんなに休むと、仕事は進まない。つらかった」。別の横浜市の会社員女性(30)は、2歳の息子を預ける認可保育園が8月、短期間に2度、休園した。
 それぞれ約2週間預けられず、遠方の祖父母にも来てもらえないため、夫婦で交代で休んで家で面倒を見た。在宅勤務できない女性は1カ月で計12日休むことに。1度目の休園では息子も濃厚接触者になったが、PCR検査は陰性。2度目の休園の際には濃厚接触者にもならなかったが、預けることはできなかった。
 夫の会社は、コロナによる特別休暇制度ができたが、女性の職場には同様の制度はなく、有給休暇を充てるしかなかった。「これから先、自分や家族が感染しても休めないかもと不安。子どもの預け先がなかった親が休める制度を、どんな職種でも導入してほしい」(奥野斐)

東京新聞 2021年9月26日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/133063