■中間層への分配重視 「3本の矢」は堅持
 「小泉改革以降の新自由主義的政策を転換する」
対する岸田氏がこの日の会見で最初に訴えたのは、規制緩和や構造改革を重視してきたことの弊害だった。「富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の格差と分断を生んできた」との認識からだ。
 富裕層が豊かになれば、いずれ庶民にも成長の果実がしたたり落ちるとするアベノミクスで主張された「トリクルダウン」が起きておらず、「市場に任せるだけではうまくいかない部分もあった」と指摘。果実の「分配」に意識的に取り組む姿勢を強調した。
 宏池会(岸田派)の創設者で元首相の池田勇人氏が1960年代に掲げた「所得倍増計画」を参考に、多くの人の所得を増やす「所得倍増」を掲げた。具体策として家計の重荷とされる教育費や住居費の支援、看護師や介護福祉士、保育士らの待遇改善、大企業による厳しい原価低減要求から中小企業を守る施策などを並べた。「格差の拡大を抑え、国の一体感を維持することが重要だ」と語った。
 一方で、アベノミクスについては「間違いなく経済は成長した」と評価し、3本の矢の大規模な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略は堅持するとした。
 新型コロナ対応の経済対策は数十兆円規模でまとめる考えだ。国債を財源とし、消費税は「当面触らない」と主張。財政再建の旗は降ろさないとしたが、具体策は語らなかった。
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