『親方想いの主倒し』

―親方のためと思って弟子やその周辺が熱心にやったことが、結果として親方に不利になってしまうという言葉である。今次2021年自民党総裁選挙で、健闘したものの第一回投票で3位に終わり、敗北した高市早苗氏の敗退原因を一言で述べればこれに尽きる。総裁選公示前から強固な保守層やネット保守から熱狂的な支持を集めた高市氏は、なぜ敗北するに至ったのか。その原因を探る。

1】厳然たる敗北
 今次総裁選のふたを開けてみれば、当初優勢とされた河野太郎氏が後半になって失速し、第一回投票(議員票+党員票)の総合計で僅かだが岸田文雄氏に逆転されたことは、大方の予想を裏切った格好であった。ともあれ河野氏の第一回投票における党員・党友票は169票(44%)と突出しており、今後も一定の影響力を保つとみられる。

 他方、「台風の目」とされた高市早苗氏は安倍晋三前総理から全面的な支持を取り付け、議員票では114票を獲得して2位となった。しかし党員・党友票では74票(19%)にとどまり、事前予測の下限程度に滞留した(都道府県別でも、得票1位は地元・奈良だけであった)。この結果は今後の不安材料として残るが、高市氏の奮闘により一定程度、今後も存在感を保つものとみられる。だが、高市氏が第一回目の投票で3位になり、一時期2位争いも射程に入ったと報道されただけに、決選投票に行けなかったことは高市氏にとって揺るがない手痛い事実であり、敗北は動かせない。

 党員・党友票=有権者の感覚に近いとは必ずしも言えないものの、当初期待されたほど高市氏は党員・党友票に浸潤しないまま終わった。高市氏を全面支援した安倍氏の影響力の衰微にも、一定関与することは否めない。

 高市氏への強固な保守層やネット保守界隈からの熱狂的支持は、2021年8月10日発売の『文藝春秋』(2021年9月号)で事実上の総裁選出馬を披歴するとの報道がなされて以降に怒涛の如く開始された。それまで、彼らは稲田朋美氏に絶大なる期待を抱いていたが、2020年に稲田氏が「選択的夫婦別姓」を容認し、LGBTの権利擁護に熱心な動きを見せると、とりわけネット保守は稲田氏に失望し、その代わりに高市氏支持に切り替えた(詳細は、拙稿”高市早苗氏の政策・世界観を分析する―「保守」か「右翼」か”21.9.9,参照のこと)。


9/30(木) 8:12
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20210930-00260743

写真 https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-yn/rpr/furuyatsunehira/00260743/title-1632953391785.jpeg?pri=l&;w=800&h=450&order=c2r&cx=0&cy=0&cw=1920&ch=1080&exp=10800&fmt=webp