京都市役所本庁舎(中京区)と、地下鉄京都市役所前駅の地下街を直結する地下通路が今月、完成した。「市民が雨にぬれずに庁舎に行ける」との目的で整備されたが、雨天でも昼間の人通りは少ない。財政難で公共料金値上げの計画が発表された直後の開通に「職員用の通路に税金を使ったのでは」と市民から不満も出た。

 通路は本庁舎改修の一環で整備された。地下街「ゼスト御池」から本庁舎地下2階に直結し、長さは約30メートル。平日午前8時〜午後6時に利用できる。ただ地下街には既に庁舎のすぐ東側と西側の地上へ出るエスカレーター、西側にはエレベーターもある。来庁者の利便性が大幅に向上したとは言えない。

 地下街で買い物中だった中京区の女性(74)は通路入り口に飾られた開通祝いの花を見て「財政難で敬老乗車証を値上げすると聞いていたので、信じられない」と驚く。「区役所には行くけど、市役所に用事なんかない。職員が雨にぬれずに通勤したいだけでしょう」と皮肉った。

 市は「職員用ではなく、市民のための通路」と強調する。雨の降った14日に訪れると、職員の昼休み中には人通りが一定見られたが、午後1時を過ぎると、通行者はごく少数になった。18日からは庁舎内で実施されている新型コロナワクチン接種の待合所になり、通路幅の半分超はいすで埋め尽くされていたが、市医療衛生推進室は「市民から通りにくいとの苦情は一切ない」という。

 税金はいくら投じられたのか。本庁舎と西庁舎を合わせた整備費は計159億円だが、地下通路だけの費用は「算定できない」。市担当者は「コロナ禍前から着工しており、今更、埋め戻すわけにはいかない」と釈明し、「車いす来庁者の利便性は格段に向上している」とした。

 市は8月、財政破綻の危機だとして、敬老乗車証に加え、保育料、学童クラブなどの料金値上げや補助金見直しを含めた計画を発表した。市民に戸惑いが広がる中、その翌月に開通した通路の評判は芳しくない。

 地下街で話を聞いた。「職員が市民のためにしっかり仕事をしてくれれば、目くじら立てる必要はない」(53歳、会社員男性)と理解する声もあったものの、「職員が自腹で整備費を払えば」「この影響で地下鉄運賃が値上げされたら、たまらない」などと不満を持つ人が多かった。

 市庁舎管理課の山本眞人課長は「単なる通路ではなく、ギャラリーなどに活用し、市民に親しまれるスペースにしたい」というが、地下通路を利用する職員は、肩身の狭い思いをしないのだろうか。

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