(ブルームバーグ):

岸田文雄首相は、総裁選で公約に掲げた「金融所得課税の見直し」を当面の間、撤回する意向を示した。
就任後の株式市場の下落や経済界からの反発に配慮した。

  岸田首相は10日のテレビ番組で「当面は触ることは考えていない。まずやるべきことをやってからでないとおかしなことになってしまう」と明言。
「誤解が広がっている」とした上で、「しっかり解消しないと関係者に余計な不安を与えてしまう」と話した。

   岸田首相の発言
   当面は触ることは考えていない。まずやるべきことをやってからでないとおかしなことになってしまう成長の果実を分配するためには
   いろいろなことをやっていかなければいけないさまざまな課題の一つとして金融所得課税の問題も挙げたが、
   それを考える前にやることはいっぱいあるということも併せて申し上げているそこばかり注目されて、
   誤解が広がっていることにはしっかり解消しないと関係者に余計な不安を与えてしまう

  見直しは格差是正策として著書や総裁選の公約に明記されており、首相は就任後の記者会見でも分配政策の「選択肢」として言及した。
ただ就任後に株価が下落が続いたほか、 楽天グループの三木谷浩史社長らが反発。所信表明演説では触れなかった。

  松野博一官房長官は11日の記者会見で、「まずは賃上げに向けた税制の強化や下請け対策の強化などに取り組んでいく」と語った。
首相の判断に株価下落が影響したかとの問いには「株価の日々の動向については、コメントすることは従来から差し控えている」と述べるにとどめた。

  モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフエコノミストは11日付のリポートで
「政権が成長よりも分配面を過度に重視しているのではないかとの市場の懸念は若干和らぐかもしれない」との見方を示した。
2022年度税制改正大綱では含まれない可能性が高くなったが、来夏の参院選後の議論で再浮上する可能性はあるとも指摘した。

  一定の収入を超えると税率が下がる「1億円の壁」が問題視される現行の金融所得課税は富裕層優遇との批判があり、
野党からは撤回に批判が出ている。立憲民主党の蓮舫代表代行は
「総裁選の公約で何が残るんだろうか」「どなたに気を使われているのだろうか」と投稿した。

  岸田首相の就任直後の世論調査は厳しい結果となっており、今後も世論の風向きを見ながらの政権運営となる。
11ー13日に各党による代表質問が行われ、14日に衆院を解散した後、19日公示・31日投開票の日程で選挙を行う。
https://news.goo.ne.jp/article/bloomberg/business/bloomberg-R0R6PTDWX2PS01.html