岸田文雄首相は14日に衆議院を解散し、総選挙の日程を19日公示・31日投開票とすると明らかにしました。就任(4日)の10日後に解散、5日後に公示=選挙戦スタート。しかも投開票日まで過去最短の17日間という短さです。

 近年、国政選挙の投票率低下が問題視されています。理由はさまざまあるでしょうが、選挙を勝敗のつく真剣勝負の「ゲーム」とみなした時に「つまらない」となる要素が多々見受けられ、今回はそこにしぼって考えてみます。

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■小選挙区制導入以降ストンと投票率下降

 現行の「小選挙区比例代表並立制」は1996年選挙から。それまでは戦後第1回(46年)を除き中選挙区制(1つの選挙区でおよそ3人から5人を選ぶ)でした。なお小選挙区制とは「1つの選挙区で1人を選ぶ」です。

 中選挙区の時期、投票率は高くて7割台、低くても6割後半のボックス圏で推移していました。それが96年にストンと6割を割り込み戦後最低を記録。その記録も、2012年、14年に塗り替えられています。

 05年の「小泉郵政選挙」と09年の「政権交代選挙」は盛り上がって6割後半まで上昇しました。それでも中選挙区時代のボックス下位に相当する程度に過ぎません。すなわち96年を境に「最低でも6割後半」だったのが「最高でも6割後半」へフェーズが変わってしまったのです。

■小選挙区制とは人気者が不在の制度

 ゲームとして中選挙区の方が面白いのは「そこそこ著名な候補=人気者がいる」と「アンチ層の願いもある程度かなう」といった点があげられます。

 まず「人気者」から。現行は約300の小選挙区で約300人、中選挙区は約130区で約500人を選びました。人気者を当選者の約1割と仮定し、満遍なく選挙区から立っているとしてみましょう。小選挙区だと1つの区に立っている確率は1割、中選挙区だと約3〜4割です。言い換えると有権者が1票を投じられる選挙区に人気者がいない確率は小選挙区で9割、中選挙区で6割程度。「小選挙区制とは人気者が不在の制度だ」といって過言ではありません。

 そこに「アンチ層の願いがかなう」が加わるのです。小選挙区は1人しか当選しないので優勢が確定的な候補がいたら、その者を支持しない=アンチ層は「行っても仕方ない」と諦めてしまいます。しかし中選挙区だといくら強い候補でも「3人から5人」の1人に過ぎませんから、アンチ層でも敵対候補を当選させる1票を投じ得るのです。

■比例区で「墓場の中からよみがえる」議員続出

 こう述べると「いや、小選挙区の方がスリリングだ」という反論が出てきます。すべてが「勝つか負けるか」の決勝戦だから有力2候補に収斂されていき、時の情勢で少数派であった勢力がオセロゲームのように黒白をひっくり返して政権交代という劇的な結末も期待できると。確かに09年の総選挙では野党民主党が6割以上を獲得して、ほんの一時期を除き与党であり続けた自民党を野に追い払ったケースがあります。

 しかし、そんな結果は過去8回の小選挙区制度下で1度だけ。他は自民党を中心とする勢力が過半数を占め、直近3回は自民だけで過半数を大きく上回っているのです。

 「非自民勢力が弱すぎるから」と結論づけるのは簡単ですが、ゲームとしてそうなってしまう要因として「単純小選挙区制」でなく「比例代表並立制」がくっついている点があげられましょう。なお中選挙区は「それだけ」ですべて決まりました。

 この比例区に「重複立候補者の復活当選」という気色悪いルールが連動するのです(※注1)。要するに「負けたが当選する=勝つ」制度。ゲームとしてはしらけますよね。

 実際、初めて実施された96年の復活組の声は「墓場の中からよみがえった」「まるでエレベーター」「とてもバンザイしようという気持ちになれない」と散々。選挙後に朝日新聞が行った「重複立候補はよかったか」という世論調査の質問に7割が「よくなかった」と答えています。

■いつの時代でも若者は投票に行かなかった

 低下の理由に若者の政治離れがいわれがち。ただこれは半分しか当たっていません。過去の総選挙の投票者を年代別でみると20代=もっとも若い(※注2)が常に最下位です。ここが「当たっている」部分。外れているのはこのトレンドが60年代あたりからずっと続いている点。つまり今の50代が20代であった時には最下位だったわけです。すなわち「最近の若者は」という論調は当たりません。低下の理由が若者の政治離れだとしたらずっと前から、その時点の若者は政治から離れているのです。(続きはソース)

https://news.yahoo.co.jp/byline/tarobando/20211011-00262648
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