? 選択的夫婦別姓制度を求める声は遅くとも1970年代には上がり、96年に法相の諮問機関が導入の民法改正案を答申した。それから25年。まだ実現への道は閉ざされている。現状を憲法違反とする訴訟が相次ぎ、最高裁は「国会で議論し判断すべきだ」と見解を示した。衆院選は、制度に対する政党の温度差も、投票先を見極めるポイントになる。(奥野斐)

◆25年前は自民の反対で頓挫
 選択的夫婦別姓の法制化を求める運動は、75年の国際婦人年のころから高まり、男女雇用機会均等法の成立や女性差別撤廃条約の批准をみた80年代に盛り上がった。96年には法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を含む民法改正案を答申。だが自民党議員の反対で国会提出が見送られた。
 衆院法務委員会では2018年、法務省の担当者が「夫婦同氏(姓)制を採用している国は把握している限り日本以外にない」と答弁。今年4月の同委員会では上川陽子前法相が「旧姓の通称使用では、氏の使い分けが必要。社会生活上の不利益が全て解消されているとは言い切れない」と述べた。だが政府は旧姓の通称使用の拡大を進める。
 「いったい、いつ導入に向けた議論をするのか。当事者たちの声は聞き入れてくれないのか」。市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」(東京)の井田奈穂事務局長は憤る。
◆各地で訴訟も、判断は…
 2010年代、夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は違憲とする訴訟が各地で起きた。15年、最高裁は夫婦同姓規定を「合憲」と初判断した上で「制度のあり方は国会で論じ、判断すべきだ」と議論を委ねた。判断に加わった15人のうち、女性裁判官3人は全員が「違憲」とした。
 民法では「夫または妻の氏を称する」と規定。だが夫婦の96%が夫の姓を選ぶのが現状だ。最高裁は「実質的には女性差別で違憲」などとして訴えた事実婚夫婦3組の家事審判の特別抗告審の決定で今年6月、再び「合憲」とした。

◆自民党では割れる賛否
 女性の就業率や家族のあり方は時代とともに変わった。先の「アクション」と早稲田大の研究室が60歳未満の成人男女を対象に昨秋実施したインターネット調査では、選択的夫婦別姓に「反対」は14.4%にとどまり、「賛成」は70.6%。20?30代女性では賛成が8割超だった。
 自民を除く主要政党は、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成の立場だ。慎重派が多い自民でも今春、制度の早期実現を目指す議員連盟ができ、現首相の岸田文雄氏は呼び掛け人に名を連ねた。一方、導入に慎重な、旧姓の通称使用拡大を進める議連には、衆院選の公約策定責任者の高市早苗政調会長が参加していた。
 家族のあり方を研究する立命館大の筒井淳也教授(家族社会学)は「自民党内では意見が拮抗きっこうしている。『家族は譲れない聖域』と考える保守層の訴えは強く、現在の戸籍制度を守りたいという思いとそれを支持する有権者に支えられている」と分析。「社会の多様性が進むほど保守的な考え方も強くなる。投票先を決める際、別姓の賛否をみることも重要だ」と話す。

東京新聞 2021年10月16日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/137033
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