過熱する報道、「人権侵害と言われても反論できない」

――9月27日に小室さんが帰国して以降、テレビ番組は自宅マンション前からの生中継で溢れました。こうした報道をどう見ていましたか。

テレビと新聞のカメラマンは各社の交代制にして、なるべくメディアスクラム(集団的過熱取材)と呼ばれない態勢を取っていたようです。
ただ、小室さんの外出といった場面をわざわざ生中継で伝える必要があったのでしょうか。
(中略)
――2017年冬に週刊誌が金銭トラブルを報じて以降、メディアの小室さんに関する報道が過熱しました。

(中略)
小室さんは、確かに、皇族の結婚相手という意味で全くの私人ではありません。しかし、何でも報じていいわけではない。
小室さんの人権を犠牲にしてまで、報道する意味があるのかないのかを、メディアは常に自省する必要がある。

ところが現状は、公共性・公益性と人権のバランスが取れていない。人権を侵害していると言われても反論できない状態にあります。

一部の週刊誌は小室さんの母親と元婚約者の赤裸々な私生活まで踏み込みました。世間の関心があれば何でも書いてよいわけではありません。
特にテレビや雑誌は、下世話な興味に答えるだけの報道になっていたと思います。天皇制、皇室の未来への議論につながるような報道はここまで少なかった。

――帰国時の長髪など小室さんの容姿を強調する報道も相次ぎました。

髪型やネクタイの柄など見た目に関する情報を延々と流していましたが、果たして必要な報道だったのでしょうか。

(中略)
多くの人にとってメディアが流す情報が本当かどうかは実は重要ではなくなっている。むしろ、自分が信じる「真実」に当てはまればよいという現象さえ見受けられました。
特に、ヤフーのコメント欄を見るとその傾向は顕著です。

誰でも後ろめたい過去や黒歴史はある」

――小室さんへのバッシングの背景の大部分を占めるのは、金銭トラブル報道ではないでしょうか。

仮に小室さんの母親に何らかの問題があったとしても、元婚約者との二人の問題です。ICUへの学費や留学のための名目だったから小室さん自身も関係があると考える人がいます。
しかし、あくまで母親と元婚約者が婚約していた時代の金のやり取りで、小室さんは関係がありません。
(中略)

――SNSやネットニュースのコメント欄は誹謗中傷とも受け取られる批判の声で埋め尽くされています。「これが国民の大多数の意見だ」といった書き込みも見かけます。

典型的な「エコーチェンバー」です。ネット上の閉ざされた空間で自分と似た意見しか返ってこないからこそ、これが、多数の意見、「国民」の意見だと勘違いしてしまうのでしょう。

――メディアの報道を起点に、世論は大きく揺さぶられました。メディアに足りなかった視点はあるのでしょうか。

今後の皇室を考えた時に何をすべきなのか、冷静かつ理性的な議論の場をメディアは生み出せませんでした。
(中略)
――美智子さまや雅子さまに見られるように、女性皇族は過去にもバッシングの対象にされてきました。なぜ、同じことが繰り返されるのでしょうか。

やはり皇室のトップである天皇陛下への直接的な批判はしづらい。かつては明らかにそうだったし、今もその空気は残っています。
その大きなタブーがあるからこそ、ナンバー2である皇太子、女性皇族などいわゆるサブ的な方々が「ヒール役」とされることがある。

なぜここまでバッシングが広がったのか?

――過去に例を見ないほど、バッシングが広がった社会的な背景はあるのでしょうか。

オウム真理教事件と阪神淡路大震災を経た日本は、社会が不安定になっています。近年では、コロナ禍や災害が重なっている。
経済政策でも、外交政策でも、感染対策でも、あらゆる問題で、社会全体が共有できる答えが見えなくなっています。
そんな時に、時代を超えた不変性を持つ「天皇制」というアイデンティティーに希望を見出す人が多くなっていると思います。
伝統を打ち壊すようにも見える眞子さまと小室さんに対して、批判が向かいやすかったと考えられます。

全文
https://www.huffingtonpost.jp/entry/princess-mako-and-kei-komuro-getting-married_jp_61751a6ee4b03072d6f7dbce