柳田理科雄空想科学研究所主任研究員

10/27(水) 9:01

https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-yn/rpr/yanagitarikao/00265042/title-1635248688738.jpeg
イラスト/近藤ゆたか


こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
皆さん、『ハイスクール!奇面組』の最終回を覚えていますか?
1980年代に「週刊少年ジャンプ」に連載されたこのマンガは、最初『3年奇面組』として始まり、途中で主要メンバーが高校に進学してタイトルも変わって、計5年間の中学・高校生活が描かれた。
ところが、最終回になって突然「すべてはヒロインの河川唯が見ていた夢だった」という事実が明かされたのだ。あれはもう本当にビックリした!
いまでも忘れがたく、科学的にもたいへん興味深いので、この最終回について考えてみたい。



◆最終回が1回目につながる!

『3年奇面組』の舞台は一応中学。
物語は、昼休みに、2年生の河川唯が窓から外を眺めてため息をつく場面から始まる。唯は、クラスメートの凡庸な会話に、物足りなさを感じていたのだ。
だが、気持ちを切り替えた唯は、声をかけてきた友達の千絵に「天気もいいし…トイレいかない?」と言い、千絵に「あなたは天気がいいとトイレにいくのかっ!?」とツッコまれる。
トイレに向かった2人が、廊下で出会ったのが「3年奇面組」の5人だった。彼らはみんな個性的な顔をしており、「せっかく個性的な顔に生まれてきたんだから 内面だって人と同じにはなりたくない」「同じような人間ばかりじゃ 人生おもしろくもなんともない」と主張する。
同じような思いを抱えていた唯は、彼らと親しくなり、一堂零を中心としたドタバタに巻き込まれる――。
こうして始まった『奇面組』は、はじめ1学年上だった零たちが落第するなどして唯と同じクラスになり、みんなで高校に進んで、タイトルも『ハイスクール!奇面組』となった。
楽しいドタバタ騒ぎに拍車がかかり、より人気が出たのはこの作品のほうかもしれない。
そして最終回――。高校卒業から2年が過ぎ、唯は短大を卒業して保育士になっていた。零の自転車の荷台に乗っているとき、彼女の頭はふと真っ白になり……。
「ちょっと唯! 唯ってば!!」と名前を呼ばれる唯。気がつくと、そこは教室だった。
名前を呼んでいたのは千絵で、驚く唯に「あんた夢でも見てたんじゃない ここは一応中学2年10組の教室よ」と言う。
周囲を見れば、クラスメートたちが凡庸な会話を交わしている。唯は「そ それじゃ零さんたちは…一応高のみんなは… あれは みんな わたしの空想だったの? ……」と、半信半疑ながら、現実を受け入れようとする。
やがて、気持ちを切り替えた彼女は、千絵に向かって「天気もいいし…トイレ行かない?」。
そう、第1話の冒頭のシーンに戻ってきたのだ……!
この結果、第1話から最終話まで、すべての話が唯の夢だったことになった。
『3年奇面組』全6巻、『ハイスクール!奇面組』全20巻の話のすべては夢だったのだ。


◆夢を見ていたのはいつ?

そもそも夢とは何か。人間は眠っているあいだに、起きているときに入ってきた膨大な情報を整理して、重要な情報だけを記憶する。このとき、昼間や過去のできごとが映像としてフラッシュバックし、それに自分で意味を与えるのが夢だと考えられている。
眠りには「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」がある。それぞれ違うタイプの情報を処理しており、見る夢も違うものになる。
ノンレム睡眠は「脳を休める眠り」で、このときに見る夢は抽象的で、深い眠りでもあるため、起きたときには忘れてしまう。
レム睡眠は「体を休める眠り」で、見る夢も、イメージが明確なストーリーのあるものになり、起きてしばらくは覚えている。
ここから考えると、唯が夢を見たのはレム睡眠のときだろう。単行本26巻分にも及ぶ具体的な話を夢に見たのだから。
ただしこれ、すごく危険な行為である。唯は教室の窓辺に立ち、窓枠に両肘をついたまま眠って、夢を見ていた。レム睡眠は体の眠りだから、筋肉は弛緩しており、ガクッと膝が折れたりしたら、窓枠で顔を打つかも……!
窓辺ではレム睡眠に入らないほうがよいです。



◆どれほど濃密な夢なのか?
     ===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitarikao/20211027-00265042