Forbes JAPAN 11/2(火) 8:00

街を疾走し人を襲う熊、樹木の食害や土砂崩れの原因となる鹿、農作物を食べ散らかす猪など有害鳥獣は、日本全国の人々を慢性的に悩ませる存在だ。

問題解決の一端を握るのは、狩猟の専門技術を保有するハンターたち。その数はここ数年で微増しているが、旧態依然の業界体質ゆえに課題が散在している。

一方、巷ではジビエブームが定着して久しい。野生鳥獣が持つ高たんぱく・低カロリーな肉の性質は健康&筋トレブームとも合致し、需要は増加傾向にある。ただ法規制やサプライチェーンに課題があり、その流通は円滑とは言い難い。

■目の当たりにしたレガシーな体質

北海道・音更町に拠点を構えるFant(ファント)は、ハンター界隈に根付く古い体質のアップデートと、スムーズなジビエ肉の流通を目指すスタートアップだ。

「依頼主からのクエストをクリアしてハンターが報酬を得る。そんなモンスターハンターのような世界を生み出したいんです」

代表の高野沙月は、ファントの目指す姿をそう表現する。ビジョンが意味するものとは何か。

高野がファントを設立したのは2019年。東京でデザイナーとして働いていた頃に食べたジビエ料理のおいしさに感動した。ジビエを多くの人に届けたいとの思いから、自らハンターになることを志し、生まれ故郷である北海道にUターンすることを決意。

しかし活動を始めると、狩猟産業に根強く残るレガシーな体質を目の当たりにする。

「技術継承や狩場など情報共有は、狩猟者の集まる猟友会や、個々人の徒弟など、アナログな人間関係のなかで共有されていました。年配ハンターは優れた技術を持っていますが、どう共有すべきか分からない、あるいは相性の良い新参ハンターにだけ教えるケースが少なくありません。そこで、ハンターたちが誰でも情報を自由に共有でき、いつでもアクセスできる『Fant』というプラットフォームを立ち上げました」

ジビエ肉の流通も変える
■ハンターと飲食店を結ぶ

現在、Fantには約400人のハンターが登録をしており、活動記録や狩場情報、猟銃や罠など狩猟方法についてのコミュニケーションが行われている。

サービスの最大の特徴は、飲食店がジビエ肉を発注できることだ。現在、オーダーをやり取りするMVP(顧客に価値を提供できる最小限の機能だけを実装した製品)が、fantとは別で稼働している。

飲食店が必要な食材の仕入れ希望時期や予算を提示すると、対象となる動物の狩りを専門とするハンターに通知が届き、要望に沿って狩猟をするというサービスで、来年からFantに統合される計画である。

まさにモンスターハンターの“クエスト”を連想させる機能だ。

「飲食店のFant参加が増えることで、ジビエの流通体系を刷新できると考えています」と期待を込める。

高野は流通の課題解消にも挑む。

日本の法律では、ハンターがジビエ肉を飲食店に直接的に販売することは禁止されており、近隣の食肉加工施設に運び込み、買い取ってもらう必要がある。そのうえ、厚生労働省が定めたガイドラインで狩猟から施設に届けるまでのタイムリミットはわずか2時間と定められており、廃棄されるケースも多い。

全国には約660の食肉処理施設があるが、その多くは1、2名で運営する小規模事業者だ。食肉解体などの処理だけでなく、在庫管理や営業、受注、代金回収などに多くの雑務に追われている。

「ハンターはこれらの制限によって、近隣の食肉施設に持っていく以外にマネタイズの方法がありません。持ち運ぶ時間も施設側が処理できる数も限られているため、処理にかかるコストの比較検討も難しい。施設の提示額に従わざるをえず、高くついてしまいます。

飲食店にとっては、仕入れ値が高くなってしまうため、気軽にジビエ肉を発注できないんです。この全体的なアンマッチを解決することこそ、有害鳥獣問題とジビエの利用率増加を解決するエコシステムづくりに不可欠です」

※続きはリンク先で
Forbes JAPAN 編集部
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d887fcc706536fd422b4f5a58db9863c7b33bdf
ファント代表 高野沙月
https://i.imgur.com/6orLdoE.jpg