政府の緊急事態宣言や飲食店への営業時間の短縮(時短)要請で大打撃を受けた外食、観光関連の消費が急回復している。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きつつあり、外出する人が増えているためだ。ただ、コロナ禍による消費者の行動様式の変化は根深く定着しており、以前の活況に戻るには時間がかかるとの見方が多い。

 「10月末で従業員向けの会食制限を解除した会社が多く、接待利用を中心に連日ほぼ満席です」

 東京都内で居酒屋5店舗を経営する「和食日和 おさけと」の山口直樹代表(40)は、東京・日本橋の店舗で開店準備作業に追われながら、ほっとした表情を見せた。

 都が要請していた時短要請が解除され、10月25日から閉店時間を午後9時から10時30分に延ばした。山口さんは「少人数向けの個室を多く持つ業態の強みを生かせている」と話す。

 消費の回復は雇用にプラスになっている。求人情報サイト「バイトル」を運営するディップによると、アルバイトを含む飲食系の求人数は、多くの地域で緊急事態宣言が発令されていた8月1週目と比べて、10月5週目は8割近く増加した。

 「県境をまたぐ移動の自粛」が影響した観光関連業界も光明が見えている。

 JR東日本によると、新幹線や在来線特急の利用者は、9月末まではコロナ禍前の3割程度で推移していた。それが緊急事態が全面的に解除された10月に入ると、観光や出張を再開する個人・企業が増え、5〜6割程度になった。JR各社は、取りやめていた新幹線の臨時列車の運行も順次再開している。

 JR東の深沢祐二社長は今月9日の定例記者会見で「宣言解除以降、鉄道の利用は回復傾向にある」と述べた。

◆旅行会社厳しく
 もっとも、ワタミの渡辺美樹会長兼社長が12日の決算記者会見で「(コロナ禍での)ライフスタイルの変化や感染予防への意識があり、午後9時以降の来店が弱い」と話すように、本格回復に向けた道は険しい。

 居酒屋「甘太郎」などを展開するコロワイドは11月から、休業していたほぼ全ての店舗で営業を再開した。一部店舗はいまだに閉店時間を通常より早めており、担当者は「場所によってはコロナ禍前の水準に戻るのは難しいだろう」と話す。

 飲食店の予約サービス「テーブルチェック」によると、11月7日までの1週間の1店舗あたりの平均来店者数は、ランチとディナーでともに前週比約3割増と急増。それでも、2019年の同じ週と比べると、ランチで1割減、ディナーでは3割減だ。広報担当者は「休業や時短営業が長かったことが尾を引き、営業時間を通常に戻せない店舗が多い」と分析する。

 旅行会社は依然として厳しい。JTBの7日時点の国内旅行予約人数は、12月が前年同月の5割、来年1月が4割の水準にとどまる。高橋広行会長は「(観光支援策の)『Go To トラベル』の再開(発表)まで、様子見しているのではないか」と指摘している。


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