ヤフーニュース11/16(火) 8:07
https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotoaiki/20211116-00268159

先週、左折するトラックによる自転車事故が連続して発生した。11日、東京・世田谷区の交差点で、自転車が左折してきたトラックにはねられ、自転車に乗っていた女性が軽傷。抱っこひもで抱えられていた生後8か月の乳児が死亡した。ドライバーは「自転車に気が付かなかった」と話したという。その翌日の12日には、茨城県で登校中の高校生が左折したトラックにはねられ、意識不明の重体。トラックのドライバーは「確認が不十分だった」としている。

日本において自転車は、原則「車道左端」を走行するよう定められている、周知のとおり「免許制」でもなければ「年齢制限」もない乗り物である。

そんな「曖昧な規則」と「誰でも乗れる気軽さ」によって、自転車は、車道では「死にたくなければ歩道を走れ」、歩道では「車輪ついてるなら車道を走れ」と邪魔者扱いされているのが実情だ。

■日本の道路が「右高左低」のワケ
自転車が道路の左端で危険に晒されるのは、これらトラックの特性だけによるものではない。「道路の構造」にも要因がある。

普段走っているだけでは気付きにくいが、日本の道路の多くは「右高左低」の構造になっている。その理由は、「雨水やごみなどを道路脇に流すため」だ。

いわずもがな、クルマにとってごみや雨水は、走行の妨げになる。そのため、道路の右(=センターライン側)を高く、左(=路肩側)を低くして、自然とそれらが道路脇(=路肩側)に流れていくよう、工夫されているのだ。一般道路ではだいたい3〜5%ほどの勾配がつけられている。

しかし、そうなれば自転車が走る道路の左端には、転がったごみ、流れた雨水を地下へ流す側溝、左に重心が傾くことで生じるクルマのタイヤの「わだち」や道路の「傷み」などが大集合することになる。おまけに路上駐車するクルマまで存在すれば、自転車が安全に走行できるはずがない。

■コロナで増える「車道での抜き合い」
それでも自転車は道路交通法上「軽車両」と位置付けられているため、原則「車道」を走らねばならない。

が、利用者が子ども・高齢者の場合や、車道の交通量が著しく多く、安全な走行が困難だと判断される場合など、やむを得ない場合は歩道も走っていいことになっている(道路交通法第63条の4)。

こうした「曖昧な規則」と「誰でも乗れる気軽さ」によって、車道からも歩道からも「邪魔だ」「危険だ」と、双方に押し付け合わされてしまう自転車だが、他車両よりも法順守に対する感覚が鈍くなるのも、これら2要因によるところが大きい。

歩道では歩行者優先が大原則。「とまれ」も「一方通行」も、「自転車を除く」という補助標識がない限り、彼らはそれらを守らねばならないのだが、現状は「守る」以前に「守らねばならないことを知らない」ことが非常に多い。

実際、冒頭で紹介した2つの事故の直後、中学3年生が乗ったマウンテンバイクが70代の男性と衝突。男性が死亡する事故が起きている。

自転車は、車道を走ればほとんどのケースで「被害者」になるが、歩道を走ると今度は「加害者」の立場になる。被害者はもちろんのこと、加害者になるのにも、年齢は関係ないのだ。ただ、上述したように、彼ら自身も安全に走行できる場所がないのが現状だ。

むしろ彼ら自身の居場所は昨今、より過酷化。コロナ禍による巣ごもりで急速に需要を拡大させたフードデリバリーや、感染防止対策の観点から公共交通機関の利用を控えた人の「通勤・通学の足」として、自転車の需要はより高まっている。

さらには今年初め、こちらも「コロナ禍の新しい足」と銘打ち走り始めた「電動キックボード」までもが車道を走るようになった。

そんな「密」状態の車道左端で、最も遅い「シェアリングサービスの電動キックボード」(制限速度15km/h)を追い越しながら、最も早い「一般的な電動キックボード」や「原付」(同30km/h)に追い越されるのが、自転車(平均速度15〜20km/h)なのだ。

今年7月、千葉県八街市で起きた「小学生死傷事故」の際も多くの指摘があったように、現在のところ日本には、自転車専用道路どころか「歩道」すらもまともに整備されていない。

国土の狭い日本において、自転車専用道路を整備することはもはや不可能なのか。

道路上の安全安心が保障されるには、結局のところ自転車はどこを走ればいいのだろうか。

今後も彼らの居場所探しは続いていく。

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