バイデン米政権が中国の人権問題への抗議として北京冬季五輪への「外交ボイコット」を表明し、
五輪のスポンサー企業は難しい対応を迫られている。

政権幹部は企業に何らかの対応を「迫ることはない」(レモンド商務長官)としているが、
米世論調査では、企業にも厳しい目を光らせる国民感情が浮かび上がる。

米議会の対中強硬派、ルビオ上院議員は五輪スポンサー企業に宛てた8日付の書簡を公表し、
企業が「ジェノサイド(大量民族虐殺)を無視して利益追求に走っている」と非難した。

書簡は五輪の最高位スポンサーに矛先を向けた。
コカ・コーラ、ビザ、エアビーアンドビーのほか、日本企業でトヨタ自動車やパナソニックも名指しされた。

外交使節を派遣しない米政府の外交ボイコットは、新疆(しんきょう)ウイグル自治区などでの中国の人権弾圧を「ジェノサイド」と糾弾する抗議の姿勢を示すものだ。
同自治区の強制労働問題では、ウイグル産繊維材料の排除を表明した欧州アパレル大手が中国で不買運動に遭った。

五輪をめぐっても報復を恐れる大手企業は沈黙を守っている。

米政権のレモンド商務長官は米ブルームバーグ通信に対し、「個別企業の対応は企業の判断次第。政府が何らかの形で(対応を)迫ることはない」と述べた。
同通信が9日伝えた。政府の外交ボイコットと、中国ビジネスとの間で板挟みとなった企業側の事情を考慮して発言したもようだ。

ただ、米調査会社モーニング・コンサルトが今月上旬、米国の成人、約2200人を対象にした世論調査では、
企業がスポンサーなどの大会支援を撤回することに「賛成」「いくらか賛成」と答えたのが計58%に達し、
「反対」「いくらか反対」の計12%を大きく上回った。「意見なし」「分からない」の回答が残りの30%を占めた。

同社は、中国女子テニス選手、彭帥(ほう・すい)さんが、中国高官に性的関係を強要されたと告白後、
動静が不明となった問題も米国民の姿勢を硬化させたとの見方を示す。

スポンサー企業は、大会のテレビ中継などを通じてブランドのアピールを狙うが、
人権問題などへの批判が高まれば北京五輪そのものへの関心が薄れる可能性もある。
https://www.sankei.com/article/20211211-WYMBJEV3LJIKHO6SFX5WC5LKRQ/