国際的運動団体Fridays For Future(以下、FFF)の日本とバングラデシュの若者たちが、「気候正義マニフェスト」を岸田政権に向けて投げかけたのである(なぜバングラデシュの若者たちがこのような行動をおこしたのかについては後述)。

 FFFは、2018年に当時15歳のグレタ・トゥーンベリ氏が気候変動問題を訴えるためにたった一人でスウェーデンの国会前に座り込みをしたことをきっかけに世界中に広まった、若者たちによる気候変動運動である。 

 世界的に若者たちが「脱炭素」を掲げているわけだが、今回、日本政府に突き付けられた「気候正義マニフェスト」は、単なる「脱炭素」ではなく、日本国内の「労働」や途上国の「貧困」などへの提言を含んでいる点で特徴的な内容となっている。

 「気候正義マニフェスト」で一番はじめに掲げられていたのは、「8時間労働で生活できる賃金」である。一見すると、気候変動運動であるFFFが「8時間労働で生活できる賃金」という要求を掲げるのは奇妙である。

 しかし、実は、気候変動と労働問題は連続する問題だ。例えば、長時間労働とそれに伴う電力消費はわかりやすい。企業は利益追求のために、労働者をできるだけ安く長く働かせようとする。その過程で、「過剰に」CO2を排出する。日本で言えば、24時間営業のコンビニやファストフード店がわかりやすい例であろう。そのため、海外では労働者たちと環境・気候変動運動が連帯して抗議行動をすることは珍しい話ではない。

 日本政府は、日本経済の成長戦略の一環として、別の言い方をすれば、日本企業の利益のために、今回のような石炭火力発電などのインフラ輸出を積極的に行ってきた。世界的には、それが気候危機を進め、現地の「貧困」を拡大させるという批判にさらされていることを、私たちは直視する必要があるだろう。

 10月にFFFJ気候正義Pが、住友商事に対して行った申し入れの際には、迫りくる気候危機とバングラデシュ国内の被害の実態を訴えても、同社の担当者は「契約済みなので中止できない」との回答を繰り返したという。
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20211215-00272211