海運大手3社が2022年3月期の通期業績予想を一段と引き上げている。3日出そろった経常利益予想は日本郵船9300億円(前期比4・3倍)、商船三井6500億円(4・9倍)、川崎汽船5400億円(6倍)とそれぞれ過去最高益を更新する。コンテナ船のスペース逼迫(ひっぱく)長期化に伴う定期船事業統合会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)の増益が主因。郵船は営業利益も航空貨物、不定期船など中心に2650億円まで増加する。郵船の第3四半期時点の利益剰余金は1兆795億円(前期末は4448億円)に積み上がっている。

 郵船の通期のセグメント別経常益予想は、ONEを主体とする定期船が前期比4・8倍の6800億円に拡大。旺盛なコンテナ輸送需要と港湾・内陸部の混雑が続いており、短期運賃の高止まりと長期運賃の上昇が利益を押し上げている。

 丸山徹執行役員は決算会見で「需給バランス正常化の時期は不透明」とコメント。その上で、今後の市況急落の可能性について「船社やアライアンスの集約が進み、以前とは業界構造が変わっている。下がるとしても(市況の)谷は大きく深くはならないだろう」と見通した。

 航空運送は経常益760億円(前期比2・3倍)、物流も同560億円(2倍)とそれぞれ大幅増益を見込む。

■不専船も6・6倍

 不定期専用船(不専船)事業も経常益1220億円(前期比6・6倍)と好調。ドライ市況と自動車荷動きの回復が寄与する。

 自動車輸送台数は17%増の415万台に上向く見通し。コロナ下で低迷した前期から荷動きが回復し、半導体不足による自動車減産のマイナス影響も限定的にとどまりそうだ。

 ドライバルクは足元のマーケット軟化を受け、中型船の市況前提を下方修正したが、昨年末までに好採算の契約獲得を進めたことで1―3月期も好調な収益を見込む。

 郵船は1兆円強の利益剰余金を活用し、今後、GHG(温室効果ガス)削減に向けたLNG(液化天然ガス)燃料船の整備や、洋上風力発電、アンモニア輸送などのグリーンビジネスに重点投資する方針。

 年間配当は1200円(前期は200円)に増配予定。配当性向は22%となり、郵船が目安とする25%を若干下回る。丸山氏は配当額について「異常とも言える利益水準やビジネス環境の中、どう配当していくべきか、議論を重ねてきた。環境関連投資の必要性など、中長期的な企業価値の向上を踏まえて決めた」と説明した。

 自己株式の取得も継続した検討課題とし、5月の取締役会で最終的な株主還元策を決議する予定。

2/4(金) 12:00配信
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