岸田文雄首相は7日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を巡り、今月中に1日100万回まで引き上げる意向を表明した。

慎重だった数値目標の設定に踏み切ったのは、オミクロン株の猛威に手をこまねいていれば、新規感染者数の伸びと内閣支持率の低下が連動した
安倍・菅政権と同じ轍を踏みかねないと危機感を募らせたからだ。だが、接種の前倒しの決断が遅れるなど、ワクチン対応は当初から後手に回っている。

「政府一丸となって、1日も早く希望する方々への接種を進めていきたい」首相は衆院予算委で、ワクチン接種の加速化への意気込みを語った。
これに先立ち、関係閣僚を集め、新たな目標達成に向けて取り組みを強化するよう指示したことも明らかにした。

3回目接種は昨年12月から始まったものの、2カ月が経過しても1日当たりの回数は50万回台にとどまる。
副反応への懸念から、国民に米モデルナ製を避ける傾向があるとされ、打ち終えたのは計画の半分程度で全人口の5・9%。

与野党から加速を求める声は相次いでいたが、政府は一貫して「各自治体が配分されたワクチンを用いて、できる限り多く接種を行う体制を構築することが必要だ」(松野博一官房長官)と、
供給不安から数値目標の設定に否定的だった。

しかし、新規感染者数は連日、過去最多を更新。首相は2日の国会審議でも「一律に何万人と目標を掲げることは適切か」と強調していたが、
3回目接種の遅れがやり玉に挙がり、批判の矛先が自らに向く中、数日で方針転換を余儀なくされた。

全自治体の97%が今月末までに希望する高齢者への接種を完了できると回答したことも踏まえ、ようやくかじを切った。


◆支持率低下に背中押される

今夏に参院選を控え、安倍・菅政権の二の舞いを避けたいという思いが首相の判断に影響したのは間違いない。2020年1月に新型コロナの国内流入が確認されて以降、
内閣支持率はおおむね、新規感染者数と反比例の関係にあり、2人の首相の退陣にもつながった経緯があるからだ。

共同通信社の1月の世論調査では、内閣支持率が55・9%と前月から4・1ポイント下落し、読売新聞社の今月4〜6日の調査でも前月から8㌽下がった。

昨年10月の政権発足後、感染状況が落ち着いていたこともあって高い水準を維持してきたが、感染拡大を抑え込めなければ、世論の離反を招く可能性もある。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/158865

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