岸田文雄首相は昨年10月の参院本会議で、日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行について、安定財源や財政の信認確保の観点から「慎重に検討する必要がある」と距離を置いた発言を行った。
国民民主党の大塚耕平氏の質問に答えたもので、同党は日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行を公約としている。

 永久国債化は名称の通り、国債を永久に償還せずに利払いのみにとどめるもので、天文学的な残高に達した日本国債の値崩れを回避しつつ発行を続けられる有効な方策との見方がある。
しかし、その一方で「国債を無制限に発行するための禁じ手」(市場関係者)と批判する声は根強い。

 そうした国債を無制限に発行しても大丈夫だとする理論の基本になっているのがMMT(現代貨幣理論)だ。そのMMT待望論がいま、政界で急速に高まっている。

MMTは「自国通貨を発行している国では財政赤字を拡大しても、インフレを招かない限りいくらでも発行でき、デフォルトは起きない」という考え方で、
安倍晋三元首相や高市早苗政調会長らが参加する自民党の「財政政策検討本部」はその急先鋒だ。本部長には西田昌司参議院議員が就いている。

■分裂する自民

 一方で自民党内には額賀福志郎氏が本部長を務める「財政健全化推進本部」も立ち上がっている。「財政健全化推進本部のバックには国債の際限なき発行に危機感を強める財務省がいる。

 次期財務次官と目されている茶谷栄治主計局長が自民党の有力議員に働きかけて設置してもらったと聞いている」(中央官庁幹部)という。設立会合には、岸田首相も駆け付けている。
自民党内には2つの財政問題に対する検討会が併存しているわけだ。

自民党内で二派に分かれた財政問題だが、財政健全化路線を堅持したい財務省と、自民党有力議員を中心に高まるMMT待望論がどういった折り合いをつけるのか。

 いずれにしてもコロナ禍で大盤振る舞いした財政の穴埋めをはじめ、危機的な状況に立たされている日本の財政赤字への対応は避けて通れない問題だ。
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