https://news.yahoo.co.jp/articles/f13920bd82e72bc2fd30282d344fa5de166ef6b4?page=2

人権問題やジェンダー格差の専門家が、中東メディア「アルジャジーラ」で上記の言葉を引用しながら、次のように語っている。

「負傷し、担架に乗せられた妊娠中のウクライナ人女性の画像が先週、ほぼすべてのイギリス紙の一面に掲載された。ウクライナの大統領だけでなく欧米の指導者も、結束を呼びかける演説をするたび、女性や子供が直面している恐怖に言及する」

「ウクライナを支援する西側諸国──特にアメリカ、NATO、EUは、女性の安全保障が戦争への対処方法を形成すると、20年以上前から主張してきた。それなのにジェンダー問題が彼らの指針のひとつになることはなく、ウクライナの苦境に対処するうえでの重要課題として言及されることもない」

ロシア軍による侵略が始まり、ウクライナのゼレンスキー大統領は国民総動員令に署名した。女性や子供は国外へ避難することができるも、男性たちは戦闘に参加するために残らなければならない。

結束を強め、断固としてロシアに屈しない国民の姿はたしかに、驚くべきものだ。報道を見ていれば思わず応援したくなる人もいるだろう。だが強制的に参戦させられ、人を殺したことがない民間人が武器を手に、人を殺さざるを得ない状況にあることに疑問を呈する声はあまり聞かれない。

「この戦争が旧態依然のジェンダーロールを固定させ、その過程であらゆるジェンダーの人々にひどい害を与えている状況を、私たちは目にしている。ウクライナにおける男性の強制的な総動員令は、男性は防衛者であり戦士、女性は脆く保護を必要とする者という二項対立を復活させている」

さらに、ウクライナ国民における性的マイノリティの問題についても同紙は指摘している。たとえば、書類上は男性として認識されているトランス女性は国境で止められ、出国を阻まれているのだという。写真や動画ではわからない方法で、戦争という巨大な暴力に苦しめられている人たちが大勢いることは想像に難くない。

「アルジャジーラ」は西側諸国の制裁におけるジェンダー意識の欠落も指摘している。ウクライナの同盟国によってロシアに下された制裁の影響を、「最初は裕福で国際志向の中産階級が最も痛感するかもしれない。だがやがて経済が悪化すると、すでに最も弱い立場にある人々が、最も傷つくことになる」。

アメリカによる制裁が下ったことで経済的に破綻しているイランとベネズエラに言及しつつ、同紙はこうした措置が「女性の労働力参加とリーダーシップを侵食し、フェミニスト活動を停止させる。そして政府が男性的プロパガンダを倍加させ、家父長制を後押しするだろう」と続けた。

また、この戦争における政治に女性の姿がないことも指摘している。たしかに、ゼレンスキー大統領が動画で共有している内閣の様子は男性ばかりだ。会談の場が設けられても、ほとんどの国のリーダーが男性だ。こうした重要な場面から「フェミニストとしての視点を持った女性たちが消えている」という。

「ロシアやその他の国のフェミニストたちも戦争に参加せざるを得なくなっている。それなのに彼女たちはこの紛争の国レベル、世界レベルでの意思決定において、ほとんど隅に追いやられているのだ」