自治体の広報誌を取り巻く環境が、転機を迎えている。多くが新聞の折り込みなどを利用した配布を実施してきたが、新聞購読世帯の減少などで行き届かない事態が発生。郵送に切り替えればコストもかさむため、担当者は頭を悩ませている。【根本太一】

 茨城県潮来市は22日、「広報いたこ情報版」の臨時号を市内全1万1340世帯に郵送した。内容は給食の無償化といった事業の周知のほか、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種呼びかけなど。市によると、2020〜21年度だけで市内の新聞購読世帯は1万超から1000以上減少。「試験的ではあるが、郵送はやむを得ない」(担当者)という。

 約3万6000世帯が暮らす鹿嶋市は「広報かしま」の郵送配布に二の足を踏む。新聞購読世帯は今後1年で2000ほど減る見込みだが、郵送するとコストは折り込みの2倍以上。1部当たりの郵便料金の下限だけでも現行の上限を上回るほか、封筒代や住所の印字、貼り付けといった費用もかさむ。

 自治体は、広報誌を「施策を市民に伝える、欠かせない手段」と位置づける。時代の変化の中、コンビニエンスストアに持ち帰り用の誌面を置くほか、自治会に依頼して戸別配布してもらったり、公式ウェブサイトに掲載したりするなどの努力を続けてきた。

 しかし自治会加入率の低下のほか、インターネット未利用層の存在などもあって、情報を行き渡らせるのは簡単ではない。県央地区に住む転勤族の50代男性は「コンビニで受け取れることも知らなかったし、自治体も転入届を受理するときに説明するなど、もっとやれることはあるはずだ」と指摘した。

毎日新聞 2022/3/27 09:30
https://mainichi.jp/articles/20220327/k00/00m/040/022000c