国際通貨基金(IMF)は19日、最新の世界経済見通しを発表した。2022年の世界経済成長率を3・6%とし、1月の前回見通しから0・8ポイント減と大幅に下方修正した。ロシアによるウクライナ侵攻が資源価格高騰などのインフレ(物価上昇)を招き、新型コロナウイルス禍からの回復途上にある世界経済に深刻な影響を与えると分析した。

IMFは、22年のインフレ率について、先進国が5・7%、新興国が8・7%と予測。前回からそれぞれ1・8ポイント、2・8ポイント上方修正した。ロシアは世界最大級の石油と小麦の輸出国で、半導体製造に必要な希少金属なども産出している。ロシアへの経済制裁でエネルギーや食料価格が上昇し、半導体不足による世界的な部品供給網の混乱で製造業の停滞を招くと見込んだ。

国・地域別の成長率では、ロシアとの経済的なつながりが強いユーロ圏は2・8%と、前回から1・1ポイント下方修正。ロシアからのエネルギー輸入が多く製造業の割合も高いドイツは2・1%と1・7ポイント引き下げ、ウクライナ侵攻の影響が際立った。ロシアとウクライナはそれぞれマイナス8・5%、マイナス35・0%で、経済縮小が深刻なものになると分析した。

米国は3・7%と前回から0・3ポイント引き下げた。ウクライナ侵攻の影響は限定的だが、インフレ抑制のための急激な金融引き締めが景気を冷やすリスクを反映させた。

中国は、新型コロナの感染再拡大による上海の都市封鎖(ロックダウン)などを反映して、4・4%と0・4ポイント引き下げた。資源小国の日本は原油高騰の影響が大きく、2・4%と0・9ポイント引き下げた。

IMFは部品供給網の混乱が長引き、世界的に高いインフレ率が23年も続くと分析。これらは世界経済の下押し圧力になるとして、同年の世界経済成長率を3・6%と0・2ポイント引き下げた。「ウクライナでの戦争が多大な代償を伴う人道危機を引き起こしている。これがもたらす経済損失は世界経済を著しく失速させるだろう」と説明している。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞最終更新 4/20 08:42
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