社会経験の少ない大人になったばかりの「若年成人」が、金銭の絡む犯罪やトラブルに巻き込まれるケースが後を絶たない。今年4月に民法が改正され、若年成人は18、19歳に幅が広がった。手を変え品を変えて繰り返される悪徳行為に立ち向かってきた仙台弁護士会の弁護士らに過去の事件簿をひもといてもらった。

説得力ある勧誘
 「1日で数十万円稼げるいいバイトがある」

 仙台市の専門学校に通っていた男性=当時(21)=は1999年10月、友達の勧誘に飛びついた。友達が実際に金を手にし、その時は何のトラブルにも巻き込まれていなかったからだ。

 「消費者金融の支店長が貸付額の実績を作りたがっている。支店長と私しか知らない話で、返済は私が全て責任を持つ」

 友達に紹介され、青葉区の喫茶店で会った男(詐欺罪で実刑)の説明は、妙に説得力があった。バイトは消費者金融を回り限度額いっぱいに金を借りることだった。男の指示通り3社から120万円を借り、報酬として24万円を受け取った。

 うまい話には裏があった。現実はバイトに消費者金融から借金させ、金を集める「名義貸し事件」。借入金の2割をバイトに渡し、残った分を先に話に乗ったバイトの借入金返済と男の取り分に回すというからくりだった。

 男は95年から犯行を重ね、4年間破綻せずに続いた。「本当に請求が来ない」。成人になったばかりの大学生や専門学生らを中心にうわさが広がって借り入れが絶えず、月々の返済額を上回る金が集まった。

 男が雇ったバイトは宮城、山形、福島、青森など1都9県の2145人に上り、消費者金融17社から計約36億円を引き出した。99年12月ごろ、男の返済が滞り、事件は表面化した。

「甘い話」注意を
 「若者がもうけ話だと思っていたのは、ただの『時限爆弾』だった」

 被害弁護団の鎌田健司弁護士(仙台弁護士会)が振り返る。弁護団が2000年1月に青葉区の県民会館で開いた被害者説明会には、若者を中心に1000人近くが集まった。被害者らの残債は総額約19億6000万円に上った。

 弁護団は金融各社に受任通知を送り、個人への督促をやめさせ、交渉を開始。さらに債務不存在の確認請求訴訟を起こし、支払い能力のない若者への過剰融資を追及した。最終的に各被害者が債務の1~2割を支払う大幅減額で和解し、事件は解決した。

 鎌田弁護士は「社会経験の少ない若者ほど、甘い話を信じてしまう。似たような『名義貸し』の話はたびたび表面化するので今後も注意が必要だ」と訴える。

 日本貸金業協会は民法改正を受け、若年成人への過剰融資防止に向けた自主規制を強化している。
(報道部・勅使河原奨治)

[名義貸し事件] 消費者金融の審査の甘さを悪用した詐欺行為で、全国で頻発している。2001~05年に南陽市出身の女、03~07年に名取市の男、06~08年に宮城県村田町の男が、若者らを使ってそれぞれ消費者金融から計数億円を引き出したとされる事件があった。日本貸金業協会は若年成人への過剰融資防止に向け、50万円以下の貸し付けでも収入状況を確認できる書類の提出を求めるなど自主規制を強化している。

河北新報 2022年5月6日 6:00
https://kahoku.news/articles/20220505khn000022.html