憲法審、異例の多数開催 維新と国民の改憲勢力野党が後押し 少数派尊重の原則を否定する声も

 15日に会期末を迎える今国会では、衆参両院の憲法審査会が例年を上回るペースで開かれ、衆院では通常国会で過去最多となった。野党ながら改憲に前向きな日本維新の会と国民民主党が開催を求めたことが背景にある。少数派の意見を尊重してきた憲法審の原則を否定する声も出始め、参院選後に性急に議論が進められる懸念がある。(佐藤裕介)
 衆院憲法審は予算案審議中には開催しないとの慣例を破り、2月中から審議を開始。9条改憲や、緊急事態に国会機能を維持するための「オンライン国会」の是非など、幅広いテーマで毎週のように開かれた。
 開催回数は2013年の13回を超えた。当時は12年衆院選で旧民主党が惨敗する一方、維新が躍進して憲法論議が活発化した。今回も21年衆院選で、改憲に前向きな維新や国民が議席を伸ばし、審議を後押し。立憲民主党は改憲に慎重とはいえ「論憲」を掲げていることもあり、改憲派の開催要求に押された。
 憲法審の前身の衆院憲法調査会では、初代会長の中山太郎元外相が少数派の声を大切にする方針を掲げ、憲法審でも丁寧な運営が「中山方式」として引き継がれてきた。小会派の委員も大会派の委員と発言時間に差がないのはその一例だ。
 だが、3月に衆院でオンライン審議を認める見解を決めた際、共産党の反対を押し切って賛成多数で可決するなど、運営が変わりつつある。緊急事態条項創設を巡っては立民や共産が国会議員の任期延長の特例を疑問視する中、自民党の新藤義孝氏が「おおむね共通理解が得られた」と強引に主張。自民幹部は4月の衆院憲法審後、周囲に「『中山方式』は役割を終えた」と言い切った。
 衆参両院では、改憲に前向きな勢力が改憲発議に必要な3分の2を占めている。夏の参院選で与党などの改憲勢力が議席を伸ばせば、初めての改憲発議に向けた動きが本格化する可能性もある。
 立民の奥野総一郎氏は「憲法審開催自体に問題はないが、取りまとめを拙速に進める姿勢は問題だ」と指摘。「憲法は国民のもので、丁寧な議論を通じ幅広い合意形成を図るべきだ。『改憲ありき』には真っ向から対峙たいじする」と主張している。

東京新聞 2022年6月14日 06時00分
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