安田 峰俊 4時間前

 飛田・松島・信太山・今里・滝井……と、これらの地名にすべて心当たりがある人は相当な好事家である。いずれも大阪府内の旧遊郭(五大遊郭)の場所で、しかも戦後も「料亭」という形態で裏風俗エリアとして存続してきた、関西屈指のディープスポットである。

 もっとも、全国的な知名度を持つ飛田新地と、京阪神ではある程度は知られている松島・信太山の両新地に対して、生野区にある今里新地は影が薄い(ちなみに滝井新地はもっと知名度が低い)。ただ、このマイナーな裏風俗スポットは、近年になり新たな顔を持ちつつある。それはベトナム人の急増だ。しかも、他の地域ではあまり見られない業種の商売もかなり多いのである。





ファッション好きのアキさん、語る

 5月25日午前11時、近鉄大阪線の今里駅で降りた私たちが歩いていると、商店街を数十メートルも進まないうちに赤地に金星が輝くベトナム国旗を見つけた。雑居ビルの2階にある店舗は、どうやら雑貨店やレストランではなさそうな雰囲気だ。

 さっそく階段を上がってみると、女性向けの服がずらりと並んだ店内で、若い女性がミシンに向かって作業している。室内なのにおしゃれなサングラスをかけており、シンプルないでたちながら、なんとなく洒落っ気がある。

「ここは何のお店ですか? ベトナムに興味があるんですけど、写真を撮っていいですか?」

「いいですよ。うちはベトナム人の女の子向けの服屋なんです」

 流暢な日本語だ。彼女はベトナム北部のハイズオン省の出身で、現在22歳のアキさん。母国語の本名に、秋を意味する「トゥーッ(Thu)」という音節が含まれているので、日本では「アキ」の名前で通しているらしい。なので、こちらの店名はAKI STORE、社名もAKI合同会社である。






ベトナム人は日本の服のSサイズでもキマらない
https://bunshun.jp/articles/-/55120