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「もう執行部の責任を問うエネルギーさえも残っていない。滅びゆく政党ってこういうもんなんでしょう」

 電話口でこう吐き捨てるように語ったのは立憲民主党幹部の一人だ。7月10日投開票の参議院選挙で立憲は、改選23議席を17議席に減らした。野党第一党は維持したが、比例代表の得票数は677万票あまりにとどまり、目標に掲げた1300万票のおよそ半分。日本維新の会より100万票以上少なかった。大敗と言っていい。しかし、党内から路線の見直し論や泉健太代表の責任論が噴き出すわけでもなく、ただただ立ちすくんでいるように見える。立憲はこのまま静かに衰退して行くのか、所属議員たちは何を考えているのか、取材した。【青山和弘/政治ジャーナリスト】

「泉代表を変える活力がない」
 今回、選挙区で惜敗した候補者に話を聞くと、決して激することなく党の実情を嘆いた。

「選挙を通じて立憲が何をしたい政党なのか国民に見えなかった。だが結果を受けても泉代表を変える活力もない。執行部を乗っ取って、自分がやってやろうというパワーもない。このままじゃ社民党みたいな運命をたどるでしょう」

 立憲は泉代表を選んだ昨年11月の代表選挙でも、出馬した4人の候補が党の分裂を恐れるあまりに激しい政策論争を回避し、活力の低下が指摘された。その状況はさらに深刻になっているようだ。

 参院選2日後、12日に開かれた幹部会では小川淳也政調会長が「今回の敗北は執行部に責任がある。人心の一新を図るべきだ」と発言し、自ら執行部批判の口火を切った。しかし、責任を問う声は続かなかった。党関係者は「今は安倍元首相の逝去もあって立憲に注目が集まっていない。議員同士でお互いに様子を窺っている感じだ」と話す。

 発言した小川氏に真意を訪ねると、「この選挙結果を受けて、今後も私がのこのこと政調会長を続けることできない。執行部は連帯責任、当たり前でしょ」と語った。そこで私が「人心一新」には泉代表の辞任も含むのかと問うと小川氏は、「それは一長一短ある」と明言を避けた。

「選挙結果がどうであれ辞めない」
 確かに泉代表を辞めさせることには党内に慎重論も根強い。ある若手議員はこう擁護する。

「泉さんは代表になって1年も経っていないし、参院選が厳しい結果になることは見えていた。執行部の態勢強化は必要だけれども、代表の責任論になるのは不思議だ。ここで交代しろと言うなら、選んだ側の責任も問われるべきだ」

 また、ベテラン議員の一人は「有力な次の代表候補がいないし、しばらく選挙もない。そんな中で代表を無理に変えるのは得策ではない」と語る。

 そして、当の泉代表本人に辞任する考えがない。参院選の前から周辺に「選挙結果がどうであれ辞めない。代表が頻繁に変わる事の方が恥ずかしいという文化が育って欲しい」と話していた。そして選挙後の幹部会では「今回の結果を重く受け止めながら、党の立て直しを図っていきたい」と続投する考えを示した。周辺には「もっと最悪な選挙結果も想定していた。野党第一党も引き続き確保できたし、厳しいけど次に向かってはプラスに考えていかないといけない」と前向きに語っている。

うごめき始めた「泉おろし」
 しかし、活力が低下している党内でも、不満の声は出始めている。地元岩手選挙区で30年ぶりに議席を失った小沢一郎元民主党代表。昨年の代表選では泉代表を支持したが、水面下で泉降ろしの動きを進めているのだ。小沢氏に近い議員は「今、党内で小沢氏が一番、泉代表を変えないとだめだと思っている」と話す。

 また今回、東京選挙区で4回目の当選を果たした蓮舫前代表代行。前回選挙は112万票あまりを獲得してトップ当選だったが、今回は67万票で6人中4番目。党運営に対する危機感は極めて強い。選挙翌日Twitterに「猛省と、再生のためのリスタートが必要」と書き込んだ。

 今後、立憲は来月のお盆前をメドに参院選の総括をまとめ、両院議員総会に報告する方針だ。そうした場で泉代表ら執行部の責任論が出てくるのは避けられないだろう。そこで鍵を握るのが西村智奈美幹事長の去就だ。幹事長が引責辞任を表明すれば泉代表に飛び火する可能性もあるし、後任の幹事長になり手がいない事態もありうる。ある中堅議員は語る。

「選挙結果は明らかに惨敗。もし代表を続けたとしても、党はまとまらずいつでも分裂含みになる。結局、身を引かざるを得ないよ」

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